読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

こころげそう~男女九人 お江戸の恋物語  畠中恵著 光文社 2007年

 幼なじみの9人を中心に描かれる江戸時模様。連作短編集。

『恋はしがち』
 幼なじみの於ふじが死んだ。於ふじの兄・千之助と共に、神田川に浮かんでいた。子供二人をいっぺんに亡くした父・由紀兵衛は気落ちして小間物屋をたたみ、隠居生活に入る。下っ引きの宇多が、恋心を言葉にすることなく於ふじを亡くしたことを後悔しつつ由紀兵衛の長屋を訪ねると、そこに於ふじが幽霊となって現れた。死ぬ寸前のことは霞が掛かったように覚えていない、と言う於ふじ。時を同じくして、赤い珊瑚の簪を挿した女の幽霊を、“おなみ”と呼んで探す男の噂が流れて来る。おなみとは、少し前に流行り病で死んだ笹屋の娘のことらしい。彼女を探す男・源蔵の目的とは。

『乞目』
 幼なじみの一人・重松が神田川の川縁に倒れていた。伯父の口入屋・永田屋で働く中間四人の喧嘩の仲裁をした帰り、何者かに襲われたらしい。従兄で永田屋の跡取り市助は親の商売に興味が持てず、茶屋で働くおまつに夢中。困ったおまつはぼて振りの弥太に相談し、弥太と恋仲のお染は面白くない。そのうち、おまつの姿が消えた。おまつはどこへ行ったのか、重松を襲ったのは誰か。

八卦置き』
 裕福なお店の娘・お品がこの頃通い詰めていた八卦置き・芳庵の姿が見えなくなった。芳庵は元々、小田原のお店の息子で、お徳と駆け落ちして江戸に流れて来た苦労知らず。殺されたのかもしれない、と心配する馴染み客の訴えで宇多が動き、面白がった於ふじは代わりに八卦置きとして情報収集し始める。宇多が世話になっている長次親分の娘・お絹はそれをたしなめ、お品の悩みは千之助のことだと言う。

『力味』
 ぼて振りの弥太の長屋に、見知らぬ老人・平五郎が居座った。その日暮らし、儲けようと言う欲のまるでない弥太に、商売のいろはを教える平五郎。深川の自分の八百屋を譲るとまで言い出す。おかげで商売を面白く思い始めた弥太だが、謎の老人にどうもすっきりしない。やがて、どうやら平五郎は、大工の棟梁の娘で弥太と恋仲のお染の知り合いらしいと分かってくる。

『こわる』
 由紀兵衛が売った小間物屋・丸中屋が、あまり繁盛していないらしい。宇多は見習いとして潜り込み、先日お品と言い争い、仲裁に入った於ふじの顔を知っていた男が、今の丸中屋の奉公人と関係あるか調べに掛かる。あまりにも高価な品を仕入れることに不審を抱く宇多。やがてお絹の命を楯に、店の何者かに奥の間に閉じ込められてしまった。

『幼なじみ』
 お品は千之助の紙入れを持っていた。しかも千之助が死んだ朝に身に着けていたもの。何故そんなものが手に入れられたのか宇多には訳が分からないまま、お品は神田川で死体となって上がり、続けて丸中屋の小僧が、手代が溺れ死ぬ。お品まで幽霊となって現れ、於ふじは彼女を連れてあの世に行くと言い出す。

 借りる前、本の題名『ころげそう』と勘違いしてました; えへ、ありがちありがち(苦笑;)。
 何か、溺死の多い話だなぁ。女はほとんど幽霊になるし(笑)。
 誰かが誰かを片思い、報われることはほとんどない。『まんまこと』もそうでしたよね。畠中さん、こう言う状況好きなのかしら。
 唯一の例外、結局一緒に上方に行った弥太とお染も、この先上手く行くかかなり不安だし。弥太って欲が無いのが魅力じゃないの? しっかりものになっちゃったら、そりゃ親としては安心して娘をやれるでしょうが、何だかなぁと思ってしまった(笑)。それなら重松の方がいいよ(←こらこら)。
 面白くなかった訳ではないのですが、どうも設定やら真相への気付き方やら、ちょっと無理がある気がしてノれませんでした。どの女の子もいまいち好感持てなかったんですよね~、何か軽率で。それだけ一生懸命、ってことなんでしょうが。
 それにしても、この副題は要ったのか…?? この惹句では、もっと軽い話を連想しそうなんですが。表紙のイラストも、桜庭一樹さんの『少女七竈~』くらいアクが強い話ならともかく、この作品にはあってない気がしました。