読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

招かれざる客たちのビュッフェ クリスチアナ・ブランド著 創元推理文庫 1990年

 アメリカでの出版は1983年。
 ミステリの真髄を伝える傑作短編集。…なんだそうで。
 解説は北村薫

事件のあとに/宇野利泰訳
 オセロー公演中、看板役者ジェイムズ・ドラゴンの妻・グレンダが絞殺された。事件を調べた誰もが、演技力が無いくせに大役を欲しがるグレンダをジェイムズが殺したと思った。メイクも落とし、衣装も既に着替えていた事件関係者一同なのに、何故再びオセローの舞台姿になって捜査陣を迎えたのか。

血兄弟/小尾芙佐
 亭主が服役中の女・リディアに手を出した双子、フレッドと「おれ」。リディアとの逢引中、「おれ」は車で子供を轢いてしまう。犯人がばれなかったのをいいことに、フレッドは妊娠したリディアも同じように殺してしまおう、と持ちかけて来る。

婚姻飛翔/深町眞理子
 横暴な年寄りサイラス・キャクストンが、自身の二度目の結婚披露パーティで毒殺された。容疑者は実の息子と義理の息子、掛かりつけの医師。かつて亡き妻の世話をしていた美しい花嫁エリザベスを巡って、すずめ蜂退治用の青酸を食事に盛ったのは誰か。

カップの中の毒/小尾芙佐
 看護婦ケリーがステラの家に飛び込んできた。医師である夫・リチャードと関係した、子供を身籠っている、致死量のモルヒネを飲んできた、とわめくケリー。元々素行の悪い女なので、誰もそんなことを信じはしない。だが、ステラは信じた。コーヒーにたっぷりのモルヒネと砂糖を混ぜ込み、ケリーに飲ませた。

ジェミニー・クリケット事件/深町眞理子
 ヘレンを巡って三角関係にあったジャイルズとルーパート。孤児だった二人を引き取った篤志家の弁護士ジェミニー・クリケットは謎の言葉を残して密室で殺され、郊外では警官が、同じ謎の言葉を電話で言い残して殺されていた。ジャイルズから話を聞いた老人が、あらゆる可能性を考え、真実を導き出す。

スケープゴート深町眞理子
 13年前、建設中の病院から、奇術師ミステリオーゾの付き人を射殺したのは誰か。病院の前にいたばかりに職務怠慢で解雇された警官ロビンズの息子が、父親の無念を果たそうと関係者を集める。

もう山査子摘みもおしまい/中村能三訳
 川で殺されたミーガン。容疑者にされたクリストウのアリバイを証明できるのは6歳の子供グウェニーとボーヨーだけ。しかし二人はある後ろめたさから、決してそれを言い出そうとしない。

スコットランドの姪/大村美根子訳
 姪っ子が受け継ぐ筈だった遺産を騙し取り、戦々恐々としているレディ・ブラチェット。家中の鍵を閉め、家政婦グラディスにも門限を守らせる。パブで主人に対する愚痴をこぼすグラディスに近づいて来る男、その男と組んでレディ・ブラチェットの真珠を盗もうとする女、真相に気付いて二人を強請る看護婦。二転三転した末に一番得をしたのは。

ジャケット/山田順子
 妻を殺そうと計画したジェラルド。入り江に泳ぎに行く妻が浮気をしていると、タイプを打ちに来てくれたミセス・ブッチャーに吹き込み、彼女を自分のアリバイ工作に利用する。

メリーゴーラウンド/大村美根子訳
 弁護士のビンデル氏がハートリイ未亡人の元を訪れた。ハートリイ氏の物だと言うポルノ写真を持ってきて、買い取るように強要する。3回目の支払いの時、未亡人はビンデル氏を撃つ。死体の傍らにあった写真を持って今度はビンデル夫人の所へ行き、夫人が理事をしている名門学校へ、娘を入学させるよう言う。

目撃/山田順子
 ミセス・ドリンダ・ジョーンズはタクシー乗っていて、前のロールスロイスの後部座席にアラブ人ともう一人、男が乗っていたのを見る。アラブ人は車の中、短剣で刺されて死んでいた。運転手が疑われるが、夫人の証言で釈放される。彼女の見た男は誰なのか、どこから乗っていつ降りたのか。

バルコニーからの眺め/小尾芙佐
 結婚して太ってしまった妻。夫の愛を取り戻そうとダイエットに励む。だが、夫の心は離れるばかり。とうとう彼女は酒に溺れ、夫に向かってデキャンタを振りかざす。その一部始終を向かいの家族が見ていた。

この家に祝福あれ/山田順子
 行く所が無いと言う若夫婦に納屋を貸してやった老婆。産まれた赤ん坊はとても美しく、彼女はその赤ん坊を救世主の生まれ変わりだと信じ込む。

ごくふつうの男/山田順子
 うっかり家に入れてしまった男は犯罪者だった。自分の言うことを聞いて愛してくれる女を捜しているだけの、ごく普通の男だと主張する。

囁き/大村美根子訳
 16歳のダフィ・ジョーンズは火遊びが過ぎて強姦されてしまった。従兄のサイモンに襲われたと嘘を吐くと、父親はサイモンを殺してしまう。だが、徐々に食い違ってくるダフィの証言に、父親は自分の過ちを悟る。裁判の証言台で、彼は真実を告白しようとした。

神の御業/山田順子
 若い母親とその子供を轢き殺したジェリングス。そのジェリングスはスピードを出していなかった、道路に飛び出したのは親子の方だった、と証言したのは被害者の父親エバンズ巡査だった。数週間後、罪に問われなかったジェリングスは、同じ場所で車に撥ね飛ばされる。泥酔状態の彼を轢いたのはエバンズ巡査だった。…

 北村薫氏が『ミステリ12ヶ月』の中で誉めていた作品。解説も書いてるんですね。
 面白かった、面白かったんだけど、これ作者「意地悪」レベルじゃないよ。「底意地が悪い」だよ(笑)。全て短編ではあるんですが、ページ数の多い作品ほど後味が悪い。短い方がすっきりまとまってる感じがしました。
 …それにしても、翻訳物はやっぱり時間がかかるわ;