読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

天空の蜂 東野圭吾著 講談社 1995年

 真夏の朝、錦重工業小牧工場からヘリコプターが盗まれた。錦重工業航空機事業本部が防衛庁のため開発した新型機、CH―5XJ。初のフライバイワイヤ方式を採用したためヘリ操縦をコンピュータが支援、格段の操作性を持った超大型ヘリコプター。そのお披露目の日、ヘリは何者かの遠隔操作により格納庫から飛び立ってしまう。ふざけて潜り込んだ子供を乗せたまま。
 ヘリは敦賀半島北端の高速増殖原型炉『新陽』の真上まで移動、上空千メートルで停止してそのままホバリングを続けている。姿の見えない犯人からの脅迫状は、ファックスで『新陽』発電所福井県庁、福井県警、科学技術庁など15箇所に送られて来た。その要求は「原発を全て使用不能にすること」。自らは『天空の蜂』と名乗った。
 ヘリコプターの燃料が切れて原発の上に墜落するまで、タイムリミットは約5時間。自衛隊のレスキュー隊員が子供を救出するべく奔走する一方、地上では警官が聞き込みを始める。原発反対運動に関わる人物を一人一人訪ねるうち、白血病で死んだ原発労働者に労災の適応を求めての署名活動から、元自衛隊員・雑賀が浮かび上がってくる。また、機密事項であるヘリの構造を知る機会のあった者、改造の知識がある者、原発の知識がある者、格納庫に入れる者などからも、もう一人の犯人が絞られて来る。
 要求通り原発が止められ、思わぬ所に節電の余波が来る。犯人は何故『新陽』を狙ったのか、ヘリ墜落は食い止められるのか。…

 読み始めて連想したのは真保裕一著『ホワイトアウト』。『99%の誘拐』(岡嶋二人)も少し。見てみたら『ホワイトアウト』は1995年、どんぴしゃ同年なんですね。こう言う類の作品が流行ってたんだなぁ。で、流行のテーマを器用にこなすんだよなぁ、この人。
 必要なのに嫌われる、見て見ぬふりをされる原発自衛隊とを取り上げる。さすが東野さん、工学知識も生かして見事にまとめてるんだけど、気軽に「面白かったね~」とはどうも言いにくい。テーマもさることながら、作者のスタンスが見えて来なかったこともあるかなぁ。どうも「これは面白い題材だ」と材料としてだけ飛びついたんじゃないの??とかなり失礼な感想を持ってしまいました、ごめんなさい;
 …どうもひねくれた見方をする癖がついてるなぁ(苦笑;)。
 でも、私も見て見ぬ振りをしている一人に違いない。友人の旦那さんが敦賀原子力発電所に勤めています。友人の子供が、こんな風な目にあわないように願ってしまいます。