読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

烏金 西條奈加著 光文社 2007年

 デビュー3作目。

 四年続きの凶作で、大塩平八郎の乱が起こった翌年の話。
 金貸し婆・三軒町のお吟の元に、若い男が押し掛けて来た。浅吉と名乗るその男はお吟の取立てを手伝う代わり、お吟の家に置いてくれと言う。浅吉のやり方はと言うと、貧乏浪人には仕事先を世話し、商売上がったりの八百屋には産地直送の仕入先を紹介、料亭と言う得意先まで見つけてやり、病気の母親の看病のため身売り寸前まで行った娘には、自家製の漬物を売る算段を立ててやる。それもこれも全て借金を返させるため。
 お武家の長谷部様の窮状を救ってやったことから、お武家の得意先が増えた。そのことで同業者の上総屋の不興を買い、お吟はさっさと逃げ出す始末。浅吉は長谷部の信頼を後ろ楯に、単身上総屋に乗り込んで口八丁手八丁、ちょっと力尽くで上総屋を丸め込む。
 浮浪児ばかりの窃盗集団に元手を貸して稲荷鮨を売らせ、商売が軌道に乗り始めた矢先、浅吉の幼馴染み・お妙が吉原から身請けされるとの情報が入る。半狂乱になって金をかき集める浅吉。だが到底足りない。お吟と築き始めていた繋がりも台無しになり、自棄になってお妙の見世に殴り込みをかけ、返り討ちにあってもう満身創痍。その上折悪く、浮浪児集団のリーダー格・勝平まで町方与力に捕まってしまった。浅吉は足を引きずって、勝平の元に駆けつける。
 算術の師匠・丹羽九厘、人懐っこい弟・蓑助、情に厚い烏の勘佐。飢饉のため娘まで売らなければならないこの時代、浅吉が金に拘る理由、お吟の元に来た本当の目的が明かされる。…

 江戸時代の経営コンサルタント。…予想以上に面白かった(←失礼;)。
 何か、デビュー作『金春屋ゴメス』より好きかも。頭がよくて腕っ節も強い上、暗い過去を持つ主人公、ってったら最強じゃん(笑)。こんなにとんとん上手く行くものかなぁ、とは思いましたが、テンポがよくてすらすら読めました。浅吉の本当の目的が何だか善人過ぎてあっけなかったり(←こらこら・笑)、妙に浪花節だったり。女にはとことん振られてしまう辺りもご愛敬(笑)。
 でもだから、「辛夷(こぶし)」にはふりがな振って下さい、ってば。