読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

千年の時をこえて 沢村凛著 学習研究社エンタティーン倶楽部 2007年

 小学五年生の「私」吉野静枝は、「恋」ってものがわからない。クラスメイトの明日香から「好きな人って、だれ?」と訊かれても何だか腹が立つばかり。なのにとなりのクラスの立花君から告白されてしまった。その場から思わず走って逃げ出して、「私」は誰もいない小さな神社に駆け込む。低いうなり声みたいな不気味な声が聞こえる境内で、「私」はマコマと名乗る不思議な少年と出会う。
 マコマは千年前の平安時代の少年。歌をまつる神官の家柄に生まれたが、ある日神社の林の中に迷い混んで出られなくなったのだと言う。姿は勿論、言葉すらも交わせるのは静枝一人。親友の美和も健太も、彼の存在は見えない。
 マコマには自分しかいない、と静枝は毎日のように神社に通う。現代の生活を知りたがるマコマに、細々した日常を語ってみせる。五歳年上の姉・夏実が親の言いつけに逆らって、長い髪を切ったり結んだりするのを嫌がること、クラスメイトのエミのひいおばあちゃんが、山の中の病院から「今青い海を白い船が走っているのを見た」と電話をかけてきたこと、藤原先生のペット・トカゲのフィリップが誘拐されてしまったこと…。
 4000以上もの歌を覚えているマコマは、その状況にぴったり合う歌を思い出して静枝に真相を示唆する。…

 待望、沢村凛さんの新刊。ファンタジー『黄金の王白銀の王』も同じような時期に発刊されたんですが、こちらは今年中には回って来なさそうです、残念;
 万葉集紹介のための連作短編集、みたいな作品。もうちょっと長くてもよかったんじゃないかなぁと思いつつ。このラストでは続編も期待できないしなぁ。でもこの潔さは好きです(笑)。最後、明日香ちゃんの好感度が上がったのが後味よかった。