読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

朝日のようにさわやかに 恩田陸著 新潮社 2007年

 恩田陸5年振りの短編集。

『水晶の夜、翡翠の朝』
 ヨハンの通う学校で、『笑いカワセミ』という遊びが流行っている。ストローの包み紙で人形を作り、誰かに仕込んで相手が気付いたら囃し立てる、という他愛ないもの。
 同じ時期、童謡「わらいカワセミにはなすなよ」を見立てた悪質な悪戯が起きた。腹部に石が飛んでくる罠が仕掛けられたり、首に針金が引っ掛かったり。やがて食堂で起きた食中毒騒動、教師を呼ぼうと廊下に飛び出たヨハンを、割れた窓ガラスとストーブの煙突が襲う。…
 …ヨハン、邪悪だわ~(笑)。このシリーズの短編って、いずれまとめて一冊になってくれないかな。
 
『ご案内』
扉を開けて、案内された自由の国とは。…
 …宮沢賢治注文の多い料理店』を連想しました。

『あなたと夜と音楽と』
 ラジオ局の前に毎週置かれる、とあるラジオ番組のオープニング曲に縁のある品々。雛人形、地球儀のビーチボール、バカボンのパパのお面、ケンタッキーおじさんの人形。リスナーから届く女の子の幽霊の噂。二人のDJがそれを話題にした翌日、プロデューサーが殺される。誰が彼を殺したのか、玄関前の品は関係があるのか。…
 …舞台かラジオドラマになりそうな一篇。

『冷凍みかん』
 旅先の鄙びた駅で、ひょんなことから託されてしまった冷凍みかん。地球そっくりの模様のあるこのみかんは、凍らせて安全なところに保管しなければならないらしい。

『赤い毬』
 私は母の母と毬つきをしたことがある。私が生まれた時にはもういなかった祖母と、潮騒の途絶えること無い筈の田舎の家で。

『深夜の食欲』
 ホテルの一室へ、ローストビーフを届けるボーイ。彼の前には不気味なものが…。
 …『月の裏側』を思い出しました。

『いいわけ』
 モデルは例のあの人(笑)、ボタンを押した彼のショートショート

『一千一秒殺人事件』
 噂のバケモノ屋敷で一晩過ごそうと、酒と肴を用意して乗り込んだ二人。噂に違わず、空中に市松人形は浮かぶわ火鉢は飛ぶわ部屋の中に井戸は現れるわ、怪奇現象てんこもり。
 …何かこれ、怖いようなユーモラスなような…(笑)。

『おはなしのつづき』
 息子の元に通い、「白雪姫」のお話をするパパ。
 …これは意外なラストでした。浮気したのかなとか奥さんと離婚したのかなとか、不穏なことを予想してた自分の不純さを痛感しました(笑)。

『邂逅について』
 冬の晩、北の町。とある本のファンレターを綴る少女。

『淋しいお城』
 「淋しい子供」エリちゃんはみどりおとこに「淋しいお城」に連れて行かれた。決して開けてはいけないと言われた黒い扉からは、他の子供の悲鳴が聞こえる。…
 …元々は『ミステリーランド』のためのお話らしい。…読みたいわ~。

『楽園を追われて』
 高校時代、文芸部に所属していた四人が、クラブメイトの死を切っ掛けに再び集まる。
 …遺稿原稿が下手くそ、ってのがすごい(笑)。普通大傑作にするよなぁ(笑)。

『卒業』
 16歳の誕生日を前に、追われて部屋に逃げ込む少女たち。今晩さえ乗り切れば、彼女たちは解放される。…
 …これ、長編で書き直してくれないかな。

『朝日のようにさわやかに』
 オランダのビール・グロールシュとトランペット、心太。幼い頃夜に聞こえていた男女の声を思い出す。…

 恩田さんの作品は私は長編の方が好きなんですよね~。この中にも、いずれ長編に書き直すのかな、と思える作品もあって楽しみ♪
 しかし、恩田さんのレパートリーの広さを改めて見た思いです。