読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

シェパートン大佐の時計 フィリップ・ターナー著/神宮輝夫訳 岩波書店 1993年

 イギリスでの初出は1964年の児童書。

 ダーンリィ・ミルズに住んでいるデイビド・ヒューズは、生まれつき片足が少し短い。みんなのように走り回れない彼は、少し空想好きに育った。家は三代続いた建具職、お父さんの仕事場には、50年前お祖父さんがシェパートン大佐から預かった大時計が置いてある。ある日デイビドは、友人のフットボールの名手アーサー・ラムズギルや牧師の息子の発明少年ピーター・ベックフォードと、こっそり教会の塔に登った。教会番のチャーリー爺さんに見つかるまいと隠れたパルプオルガンの調整室で、偶然古い新聞の切れ端を見つける。それには1914年、シェパートン大佐が農場の一軒家で焼死した事件のことが書いてあった。
 シェパートン大佐は火事の直前、デイビドのお祖父さんに電話をかけ、時計の修理を頼んだらしい。だがその時計は、不思議なことにどこも壊れていなかった。
 デイビドたちは色々な大人たちにシェパートン大佐の話を聞いて回る。チャーリー爺さんやオルガン奏者のプリチャード氏、タバコ屋のアニー・フェザストーン。ピーターのお父さんの許可を得て古い教区地図を探し出し、当時大佐が住んでいた家を見つける。火事の後焼け残った大佐の持ち物は、農場主のアーサーの家の屋根裏部屋にあった。どうやら大時計の鍵のようだ。
 足の手術を受けてうなされた夜、デイビドは夢をヒントに真相に気付く。…

 荻原規子さんがエッセイ集『ファンタジーのDNA』で紹介されていたので読んでみました。
 これ、ある種の推理小説だよ。すごく丁寧に伏線が張ってある。細かい所まで後に繋がって行くのが爽快。
 登場人物もいい。足の悪いデイビドをさり気なく気遣う友人たち。大人たちも子供たちの自主性を尊重しつつ見守ってる感じが心地いい。でも子供たち、叱られるところはちゃんと叱られてるんですが(笑)。
 翻訳が何とかならないかなぁ。失礼かもしれませんが、あまり上手ではない気がしました。教会の内部構造とか、馴染みがないこともあってどうも映像が浮かんで来にくい。シェパートン大佐の焼死に対する審議記事が出てくるまで、正直読みにくかったのですが、それ以降は内容でぐいぐい引っ張られました。
 最後、手術後の足に自信が持てなかったデイビドは、シェパートン大佐を心の支えに冒険をする。そうなんだろうな、と思いつつハマって行くのが気持ちいい。
 何だか雰囲気、ミステリーランドのシリーズみたいでした(←こらこら・笑)。