読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

青年のための読書クラブ 桜庭一樹著 新潮社 2007年

 東京山の手にある聖マリアナ学園、幼稚舎から高等部、別校舎の大学部まで一貫教育を行うミッション系のお嬢様学校を舞台に、各時代の少女たちを文学作品になぞらえて描いた「読書クラブ誌」史。

『烏丸紅子恋愛事件』:下敷きになるのは『シラノ・ド・ベルジュラック』。
 1968年。大阪の下町に育った長身の美少女・烏丸紅子が聖マリアナ学園へ転入してきた。良家の子女ばかりが集まっている生徒たちは、育ちの良さから来る残酷さで紅子に異臭を嗅ぎ取り、拒絶する。孤独な紅子は流れ流れて読書倶楽部に辿り着き、その部長・妹尾アザミの手によって学園のスタァ「王子」に祭り上げられる。さながら、シラノがクリスチャンをロクサァヌの理想の男性に仕立てたように。

『聖女マリアナ消失事件』:下敷きになるのは『哲学的福音南瓜書』。
 1919年、フランスから来た聖マリアナが聖マリアナ学園を設立し、1959年、学園から消えてしまった謎を追う一章。
 真面目で信仰篤い妹・マリアナとは対照的に、パリで享楽的な毎日を過ごす兄・ミシェール。禁書を貸す本屋『哲学的福音南瓜』を経営する兄、修道院で着実に自分の道を見つけ物にしていく妹。第一次世界大戦終了後、極東の小国・日本への伝道に旅立とうとするマリアナに、ミシェールが死の病の床にいる、と連絡が入る。…
 …この本、全く存在知らないんですが、作者の創作ではないですよね??
 
『奇妙な旅人』:下敷きになるのは『マクベス』。
 1989年。バブル全盛期、聖マリアナ学園にも新興成金の娘たちが入学して来た。革命を叫び、一時期は生徒会を乗っ取りながらも結局失脚した彼女たちは、最終的には読書クラブに流れ込み、時の部長・高島きよ子と長谷部時雨に匿われる。

『一番星』:下敷きになるのは『緋文字』。
 2009年。内気でおとなしい少女・山口十五夜は知的で神経質な加藤凛子に心酔し、読書クラブに入部する。凛子の後を追って同じ本を読み、彼女の考えを追随する十五夜。だが休日、男と並んで歩く凛子を見かけた事から、十五夜の暴走が始まる。突然軽音楽部に入り、世界文学をロックに乗せて歌う十五夜十五夜は「ルビー・ザ・スター」の愛称を得て学園の王子にまで登り詰め、凛子の不実を『緋文字』になぞらえてバラードにする。だが、凛子にはそんな心当たりはまるでなかった。…
 …十五夜のプロデュース能力、すげぇ…!

ハビトゥス&プラティーク』:下敷きになるのは『紅はこべ』。
 2019年。近隣の男子校との合併が来年に迫ったある日。シスターたちに没収された携帯電話や音楽端末を、こっそり元の持ち主に返してくれる謎の人物が現れた。姿の見えぬ英雄を、傍にいつも添えてある真っ赤な花から、生徒達は「ブーゲンビリアの君」と呼んで憧れる。読書クラブのただ一人の部員・五月雨永遠は、建物の老朽化から馴染んだ部室を追い出され、ようやくこの人物の正体を突き止めようと学園中で大騒ぎになっていることを知る。没収品を取り返したのは、『紅はこべ』に感化された永遠がしていたことだった。女子高としての最後の文化祭で、演劇部は「ブーゲンビリアの君」を題材にした演目を取り上げる。…

 …う~ん、『少女七竈』よりこちらの方が早く来たか…。
 今まで読んだ二作『砂糖菓子~』や『少女には~』とはがらりと雰囲気違いましたね~。まるで裏『マリア様がみてる』(笑)。
 児童書やライトノベル出身の作家さんが新潮社でこう言ういわゆる大人向けの本を出すと、何だかどれもファンタジーノベル大賞応募作品みたいな感じの作品になるなぁ。それだけファンタジーノベル大賞の受け皿が大きい、と言うことかもしれませんが。
 学園に花咲く乙女たちが、何だかグロテスクでありユーモラスであり、妙にイタい部分もあったり。サムワンを求める乙女心、ってのは多分「運命の赤い糸の相手」を信じるようなことを茶化しているんでしょうが、でも茶化し切ってませんよね? そんな愚かさを認めて愛しているような。可愛いよね、ってどこか目を細めて見守っている感じ。…私の気のせいかなぁ。
 各章の細かいくすぐりが、最終話で一つに繋がる。ラスト、不覚にも少しじーんと来てしまいました。
 中野ブロードウェイの喫茶『慣習と振る舞い』は少し行ってみたいかも。あ、でも聖マリアナ学園OGじゃないと入れてくれないのか(笑)。
 この装丁も好きです。アニメ『少女革命ウテナ』の影絵少女を思い出しました。曲線が顕わに出てる所は手塚治虫の絵みたい。何となく、この作品が愛されてる気がしました。