読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

バスジャック 三崎亜記著 集英社 2005年

 短編集。
 ネタばれあります、すみません;

 『二階扉をつけてください』
 出産のため、実家に帰ってしまった妻。近所付き合いなど普段妻に任せきりの「私」には、「二階扉をつけてください!」と文句をつけてくる中年女の言葉の意味も判らない。普通の工務店に設置を断られ、電話帳で二階扉専門の業者を見つけて見積もりを依頼するが、その内容も理解不能。何のために要るのかもわからないままとりあえず二階扉をつけてもらって、私は妻と子供の帰りを待つ。

 『しあわせな光』
 丘の上から双眼鏡で、僕の家の灯りを見てみる。そこにはもう既に失われてしまった幸せな日々があった。やがて、僕の知らない女性の姿が窓の中に映り始める。

 『二人の記憶』
 いつの頃からか、僕と恋人の薫との間には、記憶の齟齬が生まれ始めた。僕の行ったことのない所に、薫は僕と一緒に行ったと言い、二人で見た映画の内容もまるで違う。僕が贈った覚えのない指輪をして、何の屈託もなく笑う。どうやら薫はそのことに全く気付いていないらしい。二人の出会いの映画館に行った日、僕は彼女にプロポーズする。

 『バスジャック』
 今、バスジャックがブームである。四人で役割分担して長距離バスを襲い、記録を狙う。私の乗ったバスもバスジャックにあってしまった。…
 …これはオチが見えたな(笑)。
 
 『雨降る夜に』
 雨の夜、僕の家に本を借りに来る一人の少女。

 『動物園』
 動物園で幻の動物を見せる仕事をしている私・日野原柚月。初めは飼育係の野崎さんに嫌われていたが、見事に「ヒノヤマホウオウ」を展示し信頼を勝ち得る。だが、もっと安価でヒノヤマホウオウを演じる商売敵に仕事を奪われ、野崎さんに慰められる。

 『送りの夏』
 私、12歳の徳永麻美は家出した母・晴美を追って、鄙びた海辺の町にやって来た。駆け落ちして男と住んでいると思っていたのに、「若草荘」に一緒にいたのは青年・幸一とその恋人・絵里香、お爺さんとお婆さんの夫婦、60代の辻原夫婦とその息子、小学校低学年くらいの男の子・海里、そして中年に差し掛かったくらいの男・直樹。絵里香、お婆さん、海里と直樹は車椅子に座ったまま、身動きもしない。その人達に話し掛け、優しく世話を焼く。奇妙な共同生活を一緒に送るうち、麻美は「死」について考え始める。…
 …ドラマ『ホームドラマ!』を連想しました。お母さんと直樹さんの関係は知りたかったなぁ。

 三崎さんの作品を読むのは初めてです。
 読み始めてすぐ思いました。これは眉村卓の世界だ…!
 星新一も少し入ってるかな、でも圧倒的に眉村さん。日常にSFが違和感なく溶け込んでる世界。訳の解らない世界をもっともらしく記述する。すごく懐かしくて嬉しい。
 でも『送りの夏』はちょっと首を傾げたなぁ。これだけは違和感がありました。最後まで、あの人達は人形なのか剥製(…;)なのか気になってしまった(笑)、全然説明無かったもの。あと、お爺さんの言葉遣いも。「~じゃ」と言う語尾は、ファンタジーなどではいいんですが、現代物では私には浮いて見える。方言ならあり得ますが、こんな言葉を普段使うお年寄っていないからねぇ(笑)、そこで私はものすごく「これは作り物だ!」と感じさせられてしまう。これは私が、お年を取った方を相手にすることの多い仕事に就いていたせいかもしれませんが。
 でも、全体的には面白かった。この人の作品も次々読んで行きたいです。…読みたい作家さんがどんどん増えていくなぁ、大変だ(笑)。