読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

少女には向かない職業 桜庭一樹著 東京創元社 2005年

 13歳の女の子の、夏休みから大晦日まで。
 ネタばれあります、すみません;

 中学二年のあたし、大西葵は人をふたり殺した。
 夏休みにひとり、冬休みにもうひとり。
 武器はひとつめのときは悪意で、もうひとつめのときはバトルアックスだった。…
 パパはあたしが五歳の時に死んでしまった。故郷・山口に帰って来た母は、三年前に再婚した。初めは優しかった義父も、足を怪我して漁師ができなくなってからは酒浸りの毎日。心臓発作を起こしているのに酒は止めず、時々母やあたしに暴力を振るう。似たような境遇の田中颯太とはゲーム仲間、ほんのり恋心を抱いていたが、彼を好きだという美少女・竹田さんが現れて以来、ぎくしゃくしている。学校で明るくギャグを飛ばすあたしも、家では気弱な笑みを浮かべるばかり。
 反対に、学校ではまるで存在感のない図書委員・宮乃下静香は、ゴスロリな衣装を普段着に、奇妙な迫力を湛えている。網元の孫娘の彼女は、自分は従兄・浩一郎に仕立て上げられた偽者だ、自分にお祖父さんの遺産が入ったらきっと殺される、と告白する。確かに第一印象は怖かった浩一郎も、話してみると優しい、気さくな人。とてもそんな風には思えない。
 父親への憎しみに捕われ、薬を隠してしまったあたし。それを見ていた静香に、殺人の協力を要請される。何を信じていいのかわからず、何度もあった引き返す道を閉ざしてしまう。大晦日、静香の杜撰な計画に乗り、あたしは浩一郎の車に乗った。修学旅行先で買ったバトルアックスと携帯電話を抱えて。…

 前に読んだ『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』と同様、敵は大人。自分の世界を踏み潰す大人を倒そうと、二人の少女がか細い腕を振り上げる。葵は何度か罪を告白しようとするけど、タイミングを逃してしまう。前回同様、味方になろうとしてくれた大人もいたのに。
 「あたしの友達は、大西葵は、特別な女の子なんだよ。誰も知らないけど、葵は、本物の殺人者なんだよ。すごいでしょ?」静香のその言葉に、力づけられる葵。期待されることが嬉しくて。
 葵のお母さんがなぁ。自分のことでいっぱいいっぱいなのはわかるんだけど、でも子供に頼るなよ; お巡りさんも、ああ言うしかないだろうけど、でも今の世の中子供より自分を優先して、それを恥じない親なんかいくらでもいるし。
 取り返しのつかないところまで追い詰められて逃げられない。でも「期待に応える」って表現をする。…やりきれないなぁ。