読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

星空から来た犬 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ著/原島文世訳 早川書房 2004年

 英国での初出は1975年。
 ネタばれになるかな、多分なるな、あります、すみません;

 「星人」天狼星の総督シリウスは無実の罪で地球に落とされた。しかも犬に生まれ変わって。彼が元の世界に戻るには、失くしてしまった力‘ゾイ’を見つけて手に入れるしかない。
 シリウスはレトリバーの雑種子犬として生まれ直してすぐ、兄弟たちと一緒に川に捨てられてしまう。拾ってくれたのはキャスリーンと言うアイルランド人の少女。独立問題で父親が服役中の彼女は親戚の家で居候の身、ただでさえいじめられていたのにシリウスを飼うことでさらに肩身が狭くなる。キャスリーンと心通わせながらシリウスは成長し、やがて自分の過去を思い出す。そうだ、‘ゾイ’を見つけなくては、さて、どうやって自由を手に入れよう。
 猫が方法を教えてくれる、ソル(太陽)や月が協力してくれる、地球も敵から守ってくれる。生き別れた兄弟たちとも再会、幽霊犬がイェフと名乗り、月夜に群れて駆けて行く。でもキャスリーンが学校から帰って来るまでには家に戻っておかなくちゃ、管理不行き届きで彼女が責められてしまう。邪魔をするのは伴星と新シリウス、そして犬としての本能。‘ゾイ’とは何なのか、シリウスは本当の自分の姿を取り戻せるのか。…

 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品としてはかなり初期の本らしく、訳者あとがきによると「そのせいかストーリー運びがあっさりしている」。でも私はこの位で丁度いいかも。『七年目の魔法』とか、結末理解できなかったもの(でも「面白い」事だけは理解できる。――厄介だなぁ)。
 今回も、多分イギリスやらアイルランドやらの伝承を知らないと本当に判ったことにはならないんでしょう。‘ゾイ’を持ってた存在も何がなにやら、だったし。でも、やっぱり面白かった。一刻も早く‘ゾイ’を見つけなきゃならない時に匂いやら食欲やら発情期やら、犬の本能に負けるシリウス、可笑しい! 珍しく少し切ないハッピーエンドでした。
 翻訳物は時間がかかる事を覚悟してましたが、今回はすらすら読めました。早川にしては珍しいなぁ。