シリーズ8冊目。
ネタばれあります、すみません;
第一話 賽子と虻
餅太郎が語る。
餅太郎が生まれ育ったのは上州宇月藩の畑間村、麻や木綿が特産品。藁と端切れ布を織り混ぜて編んだ草履が評判で、餅太郎の姉おりんはこれを編むのが上手かった。その地域一番の商家に見初められ、玉の輿に乗ったのも束の間、誰かの嫉みを受けておりんは虻の呪いを受けてしまう。人口が増える度分村していったこの村々では、「ろくめん様」と呼ぶ賭け事の神様と、そのろくめん様が賭けで負けてしまった虻の神様を祀っていた。
食べる物何にでも虻が入って見えるという呪いを 餅太郎は代わりに引き受け、神様方が賭け事をして遊ぶ「賭場の里」に飛ばされる。いつか帰る日を信じてたった一人、供物の賽子の指導の下、ろくめん様に奉公する餅太郎。やがて禰宜の姪っ子のお嬢様 弥生もやって来てしばらくした頃、賭場の里に異常が発する。瞬く間に広がる炎の中、餅太郎と弥生は帰る道を探す。
第二話 土鍋女房
渡しの船頭の妹だったおとびが語る。
代々粂川の渡し守として働くおとびの家は、貧しいながら地元の人々から敬意を払われていた。兄の喜代丸にもふるほどの縁談が持ち込まれたが、喜代丸は何故か頑なに断る。だが、地元に誼を結びたい裕福な商家の娘が、強引に話をねじ込んで来た。先におとびを篭絡しようとする相手に対し、おとびも必死で反対する。兄はもう既に、粂川の何かに惚れられていたから。
第三話 よって件のごとし
浅川真吾と、その妻 花代が語る。
三十二年前の冬、久崎藩の中ノ村の夜見の池が凍り付いた。その中から、青白く膨れた土左衛門と、一人の娘が現れる。死んでいた筈の土左衛門は暫くして起き上がり、村の人を襲った。襲われた一人もまた、体が腐れるまま起き上がり、他の村人を襲った。娘は、自分は池の底を通って「向こうっ方」から来た、土左衛門は自分の父で、それを「潰し」に来たのだと言う。
池の「向こうっ方」では何年かに一度〈ひとでなし〉が、地の底から現れる。人を襲い、襲われた者もまた、〈ひとでなし〉になってしまう。早々に頭部を「潰す」しかないのだが、藩主が新しくなって、その対応が遅れたらしい。花代の村人が、土蔵の中で息を潜めて〈ひとでなし〉から隠れていると聞いて、真吾を始めとする中ノ村の人々は、彼らを助けに行く決意をする。…
宮部さんがゾンビものに手を出したぞ~~~!!!
内容的には新聞連載時に読んでましたので、再確認といった感じ。ああ、そうだったね、こんな話だった、と思い出しつつ。基本的には恐い話なのに、妙にユーモラスで可愛らしい。するする読めて、後味がいいような悪いような…。
『土鍋女房』のような異種婚姻譚は昔話のパターンではあるんですが、宮部さんが書くとこうなるのね~。もう本当、欲に駆られた人間が余計なことするから…!
『よって件のごとし』はゾンビものを見事に踏襲していて…って私、ゾンビ詳しくないんですが(苦笑;)。時代小説なのに、平行世界のSFものでもあるんですよね。水の中をみんなで潜る場面に、映画『ポセイドン・アドベンチャー』を連想しました。
おちかも身重になって三島屋の百物語も一旦休止する様子、本当に宮部さんがこのシリーズを休筆するのか、作品世界が次は数年後とかになるのか。美丈夫(笑)の長兄 伊一郎も傷心を抱えて帰ってくるようだし、宮部さんの中で次作はもう形作られている気はするんですが。
楽しみです。