読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

本と鍵の季節 The Book and The Key 米澤穂信著 集英社 2018年

連作短編集。

ネタばれになってるかも、すみません;

 

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堀川次郎は高校二年の図書委員。利用者のほとんどいない放課後の図書室で、同じく図書委員の松倉詩門(しもん)と当番を務めている。背が高く顔もいい松倉は目立つ存在で、快活でよく笑う一方、ほどよく皮肉屋ないいやつだ。

ある日、図書委員を引退した先輩女子が訪ねてきた。亡くなった祖父が遺した開かずの金庫、その鍵の番号を探り当ててほしいという。ヒントは祖父の「大人になったら分かる」という言葉と、本棚に不自然に並んだ実用書4冊。訪ねた祖父家で、二人は違和感に気付く。 

 

ロックオンロッカー

紹介割引を目当てに、二人で美容院に行くことに。荷物をロッカーに入れた時の店長の一言「貴重品は、必ず、お手元に」の言葉に、引っかかる二人。何故わざわざそう言ったのか、答えは見つかるようで、でも後からまた疑問符は湧いてくる。

 

金曜に彼は何をしたのか

7月、期末テスト期間中。図書委員の後輩・植田は「家でするより捗る」と図書室での勉強に余念がない。そんなある日、校舎の窓ガラスが壊されていた事件から、植田の兄が疑われる羽目に。多くを語らない兄の代わりに、兄のアリバイを証明してほしい、と植田は二人に泣きついてくる。植田達兄弟の狭い部屋の不自然な様子と、兄の鞄とポケットの中身のラーメン屋の割引券から、松倉が珍しく積極的に解答を導き出す。

 

ない本

三年生で自殺者が出た。図書室を訪れて来た三年生は、自殺した生徒は本を借りていた筈、それを見せて欲しいと言い出す。彼の記憶では、その本に彼の遺書が挟まっている筈なのだとか。放課後、一度だけちらっと見かけたその本を、二人は探し始める。

 

昔話を聞かせておくれよ

「昔話でもしようぜ」そう言って松倉が語ったのは、とある自営業者が泥棒から逃れるために、結構な額の財産をどこかに隠したと言う逸話。どうやら父親のエピソードを第三者的に加工して話したらしい。残されたのは当たり障りのないスケジュールが書かれた手帳と、その出来事にまつわる記憶のみ。そこからもう一台の車の存在をかぎつけた二人は、本当にバンを見つけてしまった。6年ぶりに開けた車にあったのは、書き込みがされた汚れた文庫本やどこかのアパートの鍵。そこから推測された結論は。

 

友よ知るなかれ

抱いた疑問、おかしな点を解明するために、堀川は早朝 図書館に向かい、新聞記事のデータを探す。松倉の話に筋道を通すために。…

 

 

 面白かった…!

 こういう形式もあったんですね、ホームズとワトソンではなく、二人ホームズ。それぞれに得手不得手があり(観察力とか推理力ではなく、主に物の見方、精神的な方面で)、それを補い合い、お互いがお互いを尊敬する。堀川が理想論の必要性を語る場面は、ちょっと感動しました。そう、やっぱり建前は大切なんだよ。

 日常に「あれ?」と思うことは実は結構あって、それをそれなりに自分の中で理由付けしてけりを着けたりする訳ですが、それの決定版的な感じ。そう、私も月極駐車場には引っかかったんだよ!

 これ、映像化されないかな。アニメにしてもドラマにしても面白いと思うんだけどな。下手すると腐女子のアンテナにも引っかかりそうではあるんですが(苦笑;)。