読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

伏 贋作・里見八犬伝 桜庭一樹著 文藝春秋 2010年

 『南総里見八犬伝』を下敷きにした桜庭一樹流伝奇小説。

 猟師の浜路は14歳。両親を亡くし今また育ててくれた祖父を亡くし、たった一人の兄・道節を頼って江戸の都にやって来た。江戸では昨今、「伏」と呼ばれる化け物が出没している。一見すると細面の奇麗な顔立ち、だがその実は人とは思えぬほど足はやく、跳ぶ力もすさまじく、歯が鋭く、人の心を持たぬのかというほど手ひどく残酷、からだのどこかに牡丹型の痣がある。幕府もその横行に手を焼いて、とうとうその首に懸賞金をかけ始めた。江戸へ来て早々、浜路は猟師特有の鼻の良さで、人々の中に隠れていた伏を見つけ出す。
 吉原の凍鶴大夫とその禿二人を追い詰め、猟銃で仕留める浜路。凍鶴太夫は今際の際、浜路に大量の小判と手紙を託す。浜路は情に駆られ、その品を渡しにおんぼろ長屋を訪ねて行く。そこにいたのはやはり伏の親兵衛と信乃、浜路は殺されそうになるが、寸での所で道節に命を救われる。浜路は瓦版屋の滝沢冥土を訪ね、冥土は今まで調べたそもそもの伏の物語を語り始める。
 安房の国里見の郷、領主・里見義実の元に生まれた男勝りの傾城の美女伏姫と、その弟、ひょろりと頼りない鈍色のこと、鈍色が拾って来た竜のような白犬・八房が長じて隣国の領主の首を取り、その褒美として伏姫を娶って銀の歯の森へ消えたこと。森の中で伏姫は獣のように生き、数年後再び鈍色が見つけた時には既に人の言葉も喋らなくなっていたこと。伏姫は城の座敷牢に幽閉され、噂によると、犬との間の子を産んだとか。しかし、今では里見家も失くなって、本当のことは分からないこと。
 冥土が書いた芝居に出ていた人気役者は信乃だった。見ていた浜路はそのまま信乃を追い、湯島天神へ、続いて江戸城へ通じる地下通路へ。合間浜路に、仲間8人揃って自分達のルーツである安房の国、銀の歯の森へ旅したことを問われるまま語る。
 江戸城での最終決戦、浜路は屋根の上で信乃と、道節は地下で現八と相対する。浜路の獲物は猟銃、道節の武器は正義の妖刀・村雨丸。不思議な因縁で道節の手に落ち付いた村雨丸は伏を前に張り切り、浜路の猟銃は信乃を撃たんと火を吹いた。…

 何で道節だけ人間側なんだろう…??
 登場人物も八人全員出て来る訳ではないんですね。犬士を悪役にするとはなかなか思わないよな~。
 原典にも登場する人物か桜庭さん創作のキャラクターかはまずネーミングで分かりますよね。「鈍色」「藍色」「簪」等々、この辺りは桜庭色、下敷きにしたとか言いながら全く別物。何かね、もう桜庭さん、『八犬伝』を元にした作品とか書かず、根っからのオリジナルを創作すりゃいいじゃん、とかこっそり思ってしまった。
 これ、続編あるのかな。因も果も語られたからもうないとは思うんですが、浜路と信乃の、お互いつけ狙い殺しあうような恋物語になるのかしら。原作では確か恋仲でしたよね、浜路さっさと死んじゃった覚えが…。
 私は原典は最後まで読んでいません。大学生の頃、学校の図書館にあったとある現代語訳本を読み始めたらとにかく面白かったんですが、10巻まで来たらその翻訳家さんが「体調不良のため一旦中断します」とか書いてあって、でも今さら他の人の現代語訳で読みなおす気にならず、その方の復帰を待って今日に至ります。ですから私の中の八犬伝は、親兵衛は行方不明になったままだし、毛野はまだ仲間になっていません。…もうきっと出ないよな~(溜息;)。
 ちなみに、「じゃあその代わりに水滸伝読もうか」「八犬伝って水滸伝の影響受けてるって書いてあったし」と手に取った吉川英治の『水滸伝』は作者の絶筆作品でした。これも最後まで読めずじまい、…あの頃の私の星回りってさ~(ぶつぶつ)。
 登場人物がごはんをもりもり食べるシーンがあるのが何だか印象的でした(苦笑;)。