読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

女王国の城 有栖川有栖著 東京創元社 2007年

 「学生アリス」シリーズ、15年ぶりの4作目。
 …ネタばれ、まではしてませんが、ヒントになることは書いてます、すみません;

 木曾山中の〈街〉神倉に向かうアリスたち英都大学推理小説研究会の面々。敬愛する江神部長がその街に行ったきり、何の音沙汰もないことを心配しての訪問だった。神倉は今話題の新興宗教・人類協会の総本山、UFOに乗って遠い銀河系からやってくる救世主を待つ、聖なる洞窟がある聖地。総本部はその洞窟を囲んだデザイン建築で、バブル経済の恩恵もあってかなり羽振りはよさそう、さながら〈城〉だ。
 協会の由良比呂子主査は、江神は卒論のため体験入信中で、瞑想しているから三日後でないと会えないと言う。アリスたちにはとても信じられない。街中を散策しながら江神の救出策を練っていると、翌朝、城から江神に会ってよいとの連絡が入る。ようやく江神の安否を確認できたアリスたち。安心したのも束の間、来訪者に備えて聖洞を見守っていた協会員の一人・土肥憲作が絞殺死体で発見される。
 警察に知らせようと主張するアリスたちに対し、頑ななまでにそれを拒否する協会。自分たちで犯人を捕まえてから警察を呼ぶと言い、アリスたちを城の中に監禁する。偶然居合わせた見学者・UFO研究家の荒木宙児や元警察官・椿準一も同様に外出を禁止され、「現場を保存しろ」というしごくまっとうな意見にも耳を貸さない。
 さらに次の日の朝、一発の銃声と共に会員の弘岡繁弥の死体が裏庭のプールの中で見つかる。やはり警察に通報しようとしない協会員たち。弘岡の様子は一見自殺に見えるが、その凶器・S&Wは、11年前この付近の空家で起きた密室殺人事件の凶器と同じものらしい。
 入城に際しては金属探知機まで持ち出して身体検査しているのに、銃はどこから持ち込まれたのか。東の塔の最上階で一人瞑想に耽っていたアメリ支部協会員・子母沢尊人も、前の晩、その銃で撃ち殺されていた。
 聖洞にどうしても入ろうとせず「三日後」にこだわる協会員たち、西の塔に閉じ篭ったまま出てこない協会代表・野坂公子。土肥のそばから消えていた聖洞を映したビデオテープは子母沢の部屋で見つかった。封鎖された筈の城の中に、公子に憧れた〈街〉の子供・金石千鶴が迷い込んでくるという騒ぎまで起こる。
 大立ち回りの末、一旦城外に出たもののまた帰って来た望月・織田・麻里亜の三人の情報も得て、江神は真相を言い当てる。11年前の事件、現場への放火未遂、駆け落ちし損ねた村の女性のエピソード、江神がこの〈街〉に来た理由、10時と11時に上がる花火。全てが意味を持って繋がる。…

 まぁ、久しぶり~。
 もう会えないかと思っていたので、「新作が出た」とべるさんの記事で知ってびっくりしました。
 作品内ではまだ一年も経ってないんですね。でも何もかも懐かしい(笑)。先輩連中は就活に精を出し、江神先輩は卒論を考えてて、モラトリアムはもう終わりそうなのが何だか寂しい雰囲気。
 端々の言葉遣いがチャーミングなのは相変わらず、「この電話、もらった」なんて表現には思わず顔がにやけました。「ありがとう」や「今しかない」にもちょっとじんと来てしまった。信長・モチ両先輩が繰り広げる薀蓄合戦は、多少読み飛ばしたくなりましたが(笑)。
 推理小説としてはどうなんでしょう、11年前の銃がそんなにスムーズに使えるのかなとか、あのダイイングメッセージはどうだろうとかちょっと首を傾げる所はなきにしもあらずなんですが、でも細かいエピソードまで説明がつくのはやっぱり快感。
 それにしても「閉じられた空間」を作るのがどんどん大変になってますね~。作者、苦労してるよなぁ、その説明だけで前半使ってるし、読むのも時間掛かったし。でも、5作目、期待してますから!…って買って読んでなくてすみません;