読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

紀文大尽舞 米村圭伍著 新潮社 2003年

 正徳三年(1713年)。湯屋の娘・お夢は紀伊国屋文左衛門を追い掛け回していました。女だてらに戯作者を目指すお夢は、江戸の大材木商・文左衛門をモデルに一代記をものしようとしていたのです。江戸の鞴祭りにばら撒く蜜柑を荒れ海を乗り越えて運び、荒稼ぎした金を元手に材木商となって大成功した紀伊国屋文左衛門。しかし江戸中に流れている文左衛門の生い立ちは、どれもこれも矛盾だらけ。本当の所はどうなのか、本人から直接訊こうと言うのです。しつこく文左衛門の後をつけていたお夢は、奇妙な女に命を狙われます。助けてくれたのは和歌山藩士の倉地仁左衛門と忍びのむささび五兵衛。紀州で直々に聞いてきた噂話によると、文左衛門の正体は五十嵐文平と言う遊蕩者であるらしい、その知恵の回り具合を見込まれて、当時の紀州藩藩主・紀伊徳川光貞から何事かを頼まれてはるばる江戸へ来たらしい、と分かります。ただその光貞も今は亡く、現当主・吉宗も文左衛門が父親に何を頼まれたのか知らない様子。文左衛門は何を企んでいるのか。
 文左衛門に身請けされた元吉原の売れっ子芸者・三浦屋几帳、その娘明夜は大奥に勤めているらしい。文左衛門自身、不幸な身の上の美しい女を集めて次々と送り込んでいる様子。吉宗と縁のある大久保彦左衛門の力添えで、お夢も大奥にまで潜入します。
 まだ幼い時の将軍・家継、跡目を巡って大奥でも権力争いが勃発します。それをただ面白がる月英院、巻き込まれて命まで狙われるお夢。真相の裏に更に隠された真相が暴かれて行きます。黒幕は誰なのか、どこまで誰が踊らされているのか。…

 読み始めはかなりスピード速く読めたのですが、だんだん遅くなりました(笑)。軽いノリで進むのかと思いきや、事件は生臭くなって行くし罪もない弱者はばたばた殺されるし。決して美人ではないお夢ちゃんが多少の心の拠り所、でも最終的に辛い決断を下すのは彼女。
 史実をいい様に繋げて行くのが本当にお見事。よくこじつけるなぁ。どんでん返しどんでん返しが何回も続いたり後日談が長かったりで多少しんどくもあったけど、面白かったです。
 私にこの辺りの知識があったらもっと楽しめたんだろうなぁ。