読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ベルカ、吠えないのか? 古川日出男著 文藝春秋 2005年

 ネタばれと言うか、粗筋ほとんど書いてます、すみません;

 1943年、アリューシャン列島キスカ島。4頭の軍用犬が日本軍に置き去りにされた。うち一頭は敵軍に懐かず死亡、残り三頭をアメリカ軍が鹵獲する。
 三頭のうちの一頭、北海道犬の「北」は体調不良からアラスカへ残され、橇犬として頭角を現す。その血筋を嘱望されて、沢山の仔を残す。さらに優秀な仔を望まれて、雑交配を繰り返す。その仔・アイスはカナダの犬橇レースに参加、そのままその地で仔犬を産む。別の仔・犬神(アヌビス)は狼の血を受け継ぎ、シベリアへ、さらに西へ。やがてソビエト軍用犬施設と流れ着く。宇宙を飛んだ犬・ライカ犬の子孫のいる施設へ。
 アメリカに渡った残る二頭のジャーマン・シェパードは番い、やはりよりよい軍用犬を産み出す。二頭の間の血統犬の何頭かは朝鮮戦争に駆り出され、中国軍に捕獲される。中国でもその優秀さを見込まれて仔を増やす。軍用犬に向かなかった優しい一頭・シュメールは、ブリーダーの手に渡り、美しい純血種のシェパードを産み続ける。
 アイスの仔とシュメールが交錯する。親を亡くしたアイスの仔と、仔を亡くしたばかりのシュメールが出会う。シュメールはアイスの仔を育て、メキシコまで流れて、そのまま天寿を全うする。
 中国で増えた血統は、ベトナム戦争に投入される。勿論、米国で増えた血統も。ベトコンの編んだ地下トンネル網で、二つの血統は出会い、仔が産まれる。KGB将校が、それを拾い、ライカ犬と掛け合わせる。
 アイスの子孫・カブロンは、メキシコのマフィアに飼われる。マフィアは中央アジアの麻薬に手を出し、おかげでカブロンとその仔・ギターは麻薬探知の能力まで手に入れる。アフガン戦争に巻き込まれた主人は殺され、ギターはソビエト軍用犬たちに迎え入れられる。
 交配を繰り返す犬たち。代々雌雄一頭のみに名を与えられる。それは宇宙から帰ってきた犬の名前、雄は「ベルカ」、雌は「ストレルカ」。
 ソビエト崩壊後、軍用犬抹殺命令が下る。丁度ロシアに乗り出した日本のヤクザ、その娘が捕われ、巻き込まれ、やがて自ら動く。… 

 犬で語る近代戦争史。
 どこまで史実なんだろう、と思ってしまった。
 この辺りは全くといっていいほど私自身に知識が無いので、本当、お勉強になりました。
 ただ、やっぱりアタマが付いて行かず(泣;)、ベトナム戦争終わったくらいで思考が停止(←ばか;;)。
 数多出てくる犬もこんがらがりましたね~。犬が出てくる度、「この犬はどこの親から産まれて、どういう生い立ちだったっけ??」。途中からはもう思い出す努力を止めて、素直に話の流れに身を任せました。…この記憶力の衰えが憎い;; まぁ、これはこれで正しい読み方のような気もしましたが。
 恩田さんの言い草じゃないけど、地図と家系図と年表が欲しかった(笑)。
 わざとでしょうが、上品とは決して言えない言葉選び。軍用犬の矜持を持ち、でもやはり野生を持った犬たちを生き生きと描く。政治家たちの思惑まで。ハードボイルドかと思いきや、後半メキシコマフィアの下りは「…ギャグ??」。ちょっと戸惑いました。
 犬たちに感情移入する暇も可哀想だと思う間もなく、押し流される感じ。
 とりあえず、読むのにエネルギーのいるお話でした(笑)。…面白かったのに、妙に時間かかったなぁ。やっぱり気合いが要りました(笑)。