読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

愛のひだりがわ 筒井康隆著 岩波書店 2002年

 筒井康隆の少年少女小説。小学生の女の子のロード・ストーリー…でもないか。

 人心荒廃してしまった日本が舞台。治安が悪化し、人々は自警団を組織したり番犬を飼ったりして自衛に努めていた。「わたし」は月岡愛、犬と話すことができる。小さい頃グレートデーン犬のダンに左腕を噛まれ、以来左腕が自由に動かない。ダンとデンの夫婦はそれを悪く思い、いつもわたしを守ってくれていた。12歳のある日、母が亡くなる。わたしは住み込んでいた小料理屋を逃げ出す。ろくに学校にも行かせて貰えない今の生活から抜け出し、行方不明の父親を探して一緒に暮らすために。不自由なわたしのひだりがわには、犬のデンが寄り添ってくれた。
 東京へ向かう旅の途中、わたしは色々な人に出会う。物知りで大金持ちのご隠居さん、空色の髪の少年サトル、旦那さんに虐待されながらも素晴らしい詩を書き続けていた志津恵さん、すっかり逞しくカッコよくなったお嬢さまの歌子さん、そしてたくさんの犬たち。みんなわたしのひだりがわを歩いてくれた。お金を取られたり危険な目にあったりしながらもわたしは東京に辿りつき、そこで幸せに過ごす。三年後、父の消息がわかり、わたしは改めて元いた町に戻る。わたしの心にけじめをつけるために。…

 …これ、ジュブナイルなのかなぁ。ちょっと違うと思うんだけど。
 主人公が決していい子じゃない。やられたらやりかえす、三年前の恨みも忘れない。他人からだけど愛情を受けて、父親からも精神的に独立して失恋もして、大人になる。だけど少し哀しい。
 しかし岩波書店さん、ブックマーカーのヒモくらい付けて欲しいなあ。