読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

アイズ 鈴木光司著 新潮社 2005年

 少し怖い話を集めた短編集。ネタばれあります、すみません;

 高校からの友人・大石が事業で成功を収め、その頃からのあこがれだった女性と結婚する。買った高層マンションの最上階は、やはり高校時代の友人・鳥居が下宿していたアパートの跡に建った物だった。…『鍵穴』
 愛人のマンションを訪れると、そこには誰もいなかった。向かいのホテルの一室で他の男といる彼女を見つけ、我を忘れて怒鳴り込むと…『クライ・アイズ』
 再婚を考える男性に誘われ、貴子は幼い娘と共にクルーザーに乗り込む。娘の姿がないことに気づき、「海に落ちたのでは」と海面に目を凝らすと…『夜光虫』
 朝早く、小学五年の由佳里は、マンションの扉の向こうに人の気配を感じる。恐る恐る魚眼レンズから覗いてみると、そこには毛糸帽を被った見知らぬ人が立っていた。立ち去った形跡もないのにその人物はいなくなり、表札の余白に「F」とマーキングされていた。…『しるし』
 インディペンデント系の映画の中に、自分の小さい頃住んでいた町を見つけた名波啓二。恋人のしのぶと共に、廃墟となったその町を訪ねて行く。…『檜』
 野末和己はゴルフ場で男の死体を発見する。男の背中には陸上競技のやりが刺さっていたと思ったのに、それが見えていたのは野末一人。やがて男の妻により、その夫婦の一人娘が以前自分と関係があったことが判る。…『杭打ち』
 再婚して一週間で、詳子は夫を亡くした。たまたま乗ったタクシーが、何故か夫との思い出の場所を巡って行く。…『タクシー』
 戦国時代、終戦後と続いた悲劇の記憶が、いじめられっ子の仁美の自殺を引き留める。…『櫓』
 『見えない糸-あとがきにかえて』で、作者自身の不思議な体験談をいくつか。

 一時期見られた「…自分の文章に酔ってるんちゃうん??」という癖は、なりを潜めた気がしました。それとも、短編だからかな?
 鈴木さんの作品の根底にあった「カラダ張って奥さんと子供を守る!」って姿勢は結構好きだったのですが、今回の作品は違いましたね。…何か心境の変化があったのかしら。