読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ラインの虜囚 田中芳樹著 講談社ミステリーランド 2005年

 時は1830年、所はフランスのパリ。16歳の男装の少女・コリンヌはブリクール老伯爵の前にいた。彼女は伯爵の孫なのだが、老伯爵は、自分の言うことも聞かずカナダへ飛び出し、原住民の娘と結婚した息子など勘当している、ましてや孫など認めない、の一点張り。孫娘として認めて欲しければ、と出した条件が、ライン川のほとりにある「双角獣の塔」へ行って、そこに囚われている人物がナポレオンであるかどうか確認して来る、と言うもの。コリンヌは街中で、借金取りに追われていたアレクサンドル・デュマ、海賊王ジャン・ラフィット、モントラッシュと名乗る軍人と知り合い、みんなの協力を得て双角獣の塔へ向かうことになる。道中「暁の四人組」と名乗る賊の襲撃を何度か受けるが、三人の大人達がコリンヌを守ってくれる。やがて辿り着いた双角獣の塔。塔を警備していたプロイセンの軍人と渡り合い、コリンヌはようやくその囚人と相対する。本当にナポレオンは生きていたのか、何故老伯爵はあんな条件を出したのか、コリンヌ一行を襲った「暁の四人組」の目的は。
 実在の歴史人物が織りなす架空冒険活劇。…

 佐藤賢一著『カポネ』『褐色の文豪』を読んだ後に田中さんの『キングコング』『ラインの虜囚』。…この二人興味の対象が似てるのかなぁ。同じ時期に同じ時代の作品二つ上梓するなんて。まぁ、佐藤さんの中国ものは想像できませんが(笑)。
 『黒い悪魔』『褐色の文豪』のおかげで時代背景の予習はざっとできてましたが、もっと政治よりの内容がでてくるのが田中さんらしい所かも。カナダやアメリカの独立運動メッテルニヒ宰相のやり方等、勉強になりました(笑)。デュマやナポレオンなど、どちらにも出てくる人物は造型をどうしても比較してしまいます。同じエピソードがこういう風になるのか、って所もあったし。キャラクター自体は佐藤さん像の方がアクが強い分魅力的かも。…いやいや、この作品はは歴史小説じゃないんだから。昔懐かしい翻訳物の冒険活劇の雰囲気。正義は正義、悪者は悪者の勧善懲悪。安心して楽しめる娯楽作品。
 「はじめて剣をにぎった未熟者は、とんでもない思いちがいをする。自分は人を殺す資格をあたえられた、とな。まったくとんでもない。武器を持つということは、自分を殺す権利を相手にあたえる、ということなのだ」…田中さんらしいなぁ。