読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

深川恋物語 宇江佐真理著 集英社 1999年

 時代小説の短編集。少しネタばれあります、すみません;
 はすむかいの下駄屋・巳之吉に恋するおけい。蔵持ちの伊豆屋の娘であるおけいと下駄屋では釣り合いが取れない上、巳之吉は悪い女に引っ掛かり出奔してしまう。おけいは巳之吉を諦めて他家への嫁入りを決意、最後の履物を誂えてもらう『下駄屋おけい』
 おてるは花火職人の信次と恋仲だった。だが母親が病気になり生活に困った事から、裕福な商家の主人の妾になることを決める。信次は思い詰めて匕首を懐におてるの長屋を訪ねるが、隣りの簪職人夫婦に諭されて思い留まる『がたくり橋は渡らない』
 凧師の末吉の元を越後屋の娘・おゆいが訪れる。小さい頃から病がちだったおゆいは自分で西瓜の絵を描いた凧を拵えたいと言う『凧、凧、揚がれ』
 大工の佐吉の妻・お新の描く絵が評判になり、やがて絵師として名が上がって行く。お互いを気兼ねし、また甘え、二人の仲は拗れて行く。義姉とのいざこざもあって別れた三年後、ばったり会って言葉を交わす『さびしい水音』。…何か現代でも通じそうだな、この話。全てを糧とするお新の芸術家魂はさすが。
 『仙台堀』乾物問屋・魚仙の奉公人久助は料理屋・紀の川に出入りしている。魚仙の娘で身体の弱いお葉は紀の川の跡取り与平に惚れている。久助はそんなお葉が気になり、与平の妹・おりつは久助を気に入っている。与平と蕎麦屋の娘との縁談が纏まったある日、四人は連れだって出かけ、与平の祝言の前日、お葉は行方不明になる。…与平のひどい男っぷりが際だつ一編。おりつみたいなハキハキした女の子は普通好感度高いもんなんだけど、不思議に低く感じました。相手の事を思い遣らない兄妹だなぁ。
 『狐拳』材木問屋信州屋のお内儀・おりんの血の繋がらない息子・新助が吉原の娘・小扇に骨抜きになっている。仕方なく小扇を引き取って息子の嫁に迎えようとするが、小扇自身が嫌だと言い始める。実は小扇は以前おりんが産んで里子に出した娘だった。…これ、途中でネタ判るからなぁ。
 下町言葉がそのまま書いてあるので、所々「…あれ、どういう意味?」と読みにくい事があったり。声に出してみたら判るんですが、「やっつくれ」(=「やってくれ」)とか書かれると一瞬「え?」とか思いました。私が関西の人間だからかしら。
 この著者の作品は初めて読みましたが、話自体はどれも粒が揃って面白かったです。