読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ゆめつげ 畠中恵著 角川書店 2004年

 時は幕末。川辺弓月は清鏡神社の長男で、夢占い-ゆめつげ-ができる。ただこのゆめつげ、本人の性格を反映したのか、正確なのだが役には立たない。そんなおっとり、のほほんとした兄がしっかり者の弟・信行にはどうにも歯がゆい。ある日、そんな弓月の噂を聞きつけて白加巳神社の神官・彰彦が相談にやって来る。氏子の大店・青戸屋の一人息子が八年前の大火事で行方不明になったのだが、今になって三人も名乗りを上げてきた、誰が本物か占って欲しい、とのこと。しぶしぶ請け負いはしたものの、道中辻斬りに襲われたり占いを疑われたり、ろくなことがない。やがて第一、第二の殺しが起きる。国家が変わると言う時代の流れを背景に、弓月達も事態に巻き込まれていく。…
 この人、うまいわ。
 一つ謎を出しておいて、でも別の謎の伏線だけは引いておく。それが解けた所で次の謎をメインに据え、盛り上げる。流れがスムーズですごく読みやすい。
 「ゆめつげ」とはこの場合、予知や過去見の能力ですね。登場人物がそれぞれ収まるべき所に収まってる。緊張感に欠ける兄とそれを気遣って苛々してしまう弟(実際は兄貴に庇われてる)、腹に一物持つ彰彦、豪快な玄海。「しゃばけ」シリーズと合わせると重なって見える所もあるんですが、これは何だか「畠中一座」と言った感じ。畠中さんの主宰する劇団があって、役者にあわせて役を振り、脚本を書き、演出している、というのが一番しっくりくる。高橋克彦の作品でも似たような感想を持ったことがあります。
 「書こうと思ったら続編も書けますよ」って雰囲気がいかにもありありなラストは少々あざとい気がしますが、もし続編出されたら読んじゃうなぁ。…何か悔しい。