20世紀初頭。日本は日清戦争後、大きなうねりに呑み込まれようとしている時代。医者の娘・峰子は村の実力者・槙村のお屋敷に、末のお嬢様聡子の遊び相手として呼ばれることになる。聡子は生まれつき身体が弱く、大人にはなれないだろうと言われていた。美しく聡明な聡子に峰子は心酔する。その夏、槙村のお屋敷に4人の家族が訪れ、滞在する。彼らは人の記憶を「しまう」という不思議な能力を持っていた。日本文化に絶望する西洋画家椎名、仏像が彫れなくなった仏師永慶、国のために命を投げ出せるという書生新太郎、はたから見れば荒唐無稽としか思えない発明に精を出す池端老人。槙村家の人々と客人を廻って起こった一夏を、峰子は回想する。…
恩田陸の作品は私の中で凄く好きな作品とそれほどでない作品に真っ二つに分かれます。…これはそれほどでない方かなぁ。面白いのは面白いんだけど、クライマックス泣いたんだけど、「凄く好き」な作品が好きすぎて、ハードル上がっちゃってますね(苦笑)。「光の帝国」と同シリーズなんですが、あちらの後書きで書かれてた「いつか書きたい物語」でなかったのは個人的にちょっと残念。
この人の書く少年少女は透明感があって、でもどこか淡く霞みがかかってて、やっぱりいい。特に今回の作品は悲しい結末だろうことが始めから作品に漂ってて、とても切ない。それが早く先を読みたい、と思わせる原動力にもなっている感じがする。…あれ、やっぱり気に入ってるのかな(笑)。