読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

隣のずこずこ 柿村将彦著 新潮社 2018年

 日本ファンタジーノベル大賞2017受賞作。
 ネタばればりばりあります、出たばかりの本なのにすみません;

 矢喜原村(正確には町)。中学三年の同級生は4人しかいない、高校生になったら隣町で一人暮らしをしなければいけない位の田舎町。この町に、5月、「権三郎狸」が現れた。
 代々村に伝わる昔話の登場動物、権三郎狸。若い女の後に現れて、村人全てを呑み込んで、村を焼け野原にして去っていく怪物。何かの象徴とか比喩とかそういうことではなく、どうやら本当にいたらしい。
 幼い頃から嫌と言うほど昔話を聞かされてきた村人たちは、不思議なほど粛々と運命を受け入れる。後一ヵ月の命、だがその行動は歪み、たわんでいく。
 海外へ逃げる森田一家、貯蓄を上等の肉につぎ込んで毎日バーべキューをする綾子一家。空家には不審火が続く。はじめの姉・ひとみに懸想していた伊藤はひとみを襲い、はじめは角材を握りしめて復讐に走る。
 その翌日、ひとみの姿は消えた。一足先に、権三郎狸に呑まれることを望んだらしい。家族からひとみの記憶が消えていく様を見て、はじめは怯える。
 次々に起きる村の空家への放火は、恵美の仕業だった。村外から来た恵美には、何の抵抗もなく権三郎狸を受け入れる村人が信じられない。恵美に説得されたはじめは、とある可能性を思い付く。恵美の言うように権三郎狸をやっつけるのではなく、権三郎狸を連れて来た女性 あかりさんを殺したら…??
 はじめは恵美と共に、あかりの泊まっている待田旅館へ向かう。…


 何の予備知識もなく読み始めました。のんびりゆったり、ユーモアファンタジー化と思いきや、徐々に微妙な方向に。…いや、これ、怖いよ、ホラーの領域だよ;
 でその怖さも、いやいやその考えや行動おかしいよ、とツッコミ入れたくなるサイコホラー系か思いきや、スプラッタ行ったりするし。最終的には民話的にまとめてられてて、あっと思いました。そうか、こういうパターンの昔話あるじゃん、八百比丘尼とかさぁ!
 あかりさんを狸に呑ませなかったら、話は変わってたのかな。村外に逃亡した人を、どうやって追いかけて行くのかな。
 とりあえず。ファンタジーノベル大賞、復活してくれてよかった。