読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

新選組血風録 司馬遼太郎著 中央公論社 1964年

 1999年改版、短編集。

 油小路の決闘
新選組諸士取調役 篠原泰之進。伊藤甲子太郎と共に新選組を脱盟した。伊藤甲子太郎が暗殺された後、油小路に死体を引き取りに行き、待ち伏せしていた新選組隊士と死闘を繰り広げ、辛くも生き延びた。

 芹沢鴨の暗殺
結党から半年、芹沢鴨の乱行と暗殺されるまでの経緯。

 長州の間者
深町新作は弁財天女へのお参りを切っ掛けに、おそのと知り合った。その姉を通じて新選組に、長州の間者として入隊する。自分の他にも間者はいるらしかったが、新作はそれが誰かは知らない。ある日、新作は土方から、間者を斬るように言われる。

 池田谷異聞
山崎烝の生い立ちと、長州系浪士 大高忠兵衛の、先祖からの因縁。

 鴨川銭取橋
武田観柳斎を、薩摩と通じていると陥れて暗殺するまで。

 虎徹
近藤勇が手に入れた刀・虎徹は本物ではない。だが、後々手に入った実物と引き比べてさえ、近藤はこちらを本物だという。
 
 前髪の惣三郎
妖しいほどの美貌を持つ加納惣三郎。同時期に入った田代彪蔵の衆道の手に落ちた。やがて、惣三郎の存在は、隊士間の色恋沙汰に発展していく。

 胡沙笛を吹く武士
こさぶえを吹く武士・鹿内薫は、奥州南部領から京に上がって新選組に入隊した。小つるという女と出会い、子供ができて、鹿内は怯懦に捕らわれるようになる。

 三条磧乱刃
井上源三郎と芸州浪人国枝大二郎の打ち合いを見、馬鹿にした肥後藩浪士との顛末。

 海仙寺党異聞
長坂小十郎は、同じ甲州出身の浪人中倉主膳を斬るよう言われた。中倉は女を巡る争いで、士道不覚悟を言い渡されたのだ。元々医者志望だったのが居合を修めていたばかりに、長坂は中倉の恋敵を探索し、結果水戸藩藩士と渡り合うことになる。

 沖田総司の恋
肺を患い、医者に通う沖田総司。その家の娘に会いに清水寺へ通っているのを、土方と近藤が気をまわして台無しにする。

 槍は宝蔵院流
槍の名手 谷三十郎。近藤はひどく気に入り、その息子を養子にするまでに。だが、谷自身はそれを鼻にかけ、密告に明け暮れるような男で、斎藤一は眉を潜めた。

 弥兵衛奮迅
薩摩藩士 富山弥兵衛は新選組に入り、その朴訥な性格で皆から好かれたが、実は間者であった。伊藤甲子太郎と薩摩の繋ぎもつけていたが、後に土方に怪しまれ脱出。天稟の間者として水戸藩にも潜入する。

 四斤山砲
永倉新八を訪ねて、出羽浪人大林兵庫と名乗る男が現れた。永倉に覚えはないが、道場での師匠だったという。生半可な知識で近藤に気に入られ、砲術師範にのし上がる。大林に格下に扱われた古参の阿部十郎は、伊藤甲子太郎について脱退、後々薩摩藩に渡る。

 菊一文字
名刀・菊一文字を手にした沖田総司は、かえって刀を抜けなくなった。そのことが、部下の命を奪われることになる。…


 司馬遼太郎作品を読むのは初めてです。どれか読んどいた方がいいんだろうなぁ、でもどれも長いんだよなぁ、と思ってたら書架でこの本を目にしました。おお、一冊で済むじゃん、と思って借りてみたら短編集でびっくり。…つまり、その程度の知識しかないということで(苦笑;)。
 これ、ある程度の新選組の知識がないと読み難いだろうなぁ。私は、というと知識の入手先は大河ドラマ新選組!』がほとんどなので、ですから登場人物はほとんどあのキャストで浮かびました。土方歳三山本耕史さん、伊藤甲子太郎は谷原章介さん、山崎烝桂吉弥さん、てな感じで。
 さて、どこまで史実なのか。司馬遼太郎は「こっちの方が面白い」ってんで結構自分で作り出しちゃったり捻じ曲げたりをする人だった、と聞いているので(笑)。知らない人物ばかりで(いや、だから元々の知識がないんですってば)面白くはあったんですが。
 近藤勇の人物像が、どうもおべっかに弱い軽率な人に見えてですね; その分、おおらかで人がいい、って側面もあるんでしょうが、どうもついて行く気にはなれませんでしたねぇ。
 「京おんなは好いても惚れない」って表現が何回か出て来て、成程、と思ったり。なかなか健気な女性は出て来ませんでしたね、さすが京おんな、と妙な所で感心しました。