読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

勇者たちへの伝言 いつの日か来た道 増山実著 角川春樹事務所 2013年

 ネタばれになってるかも、すみません;

 父はなぜ、自分をあの場所へ連れていったのだろう――

 ベテラン放送作家の工藤正秋は、リサーチのために乗車していた阪急神戸線の車内アナウンスに耳を奪われる。「次は……いつの日か来た道」。謎めいたアナウンスに導かれるように、彼は反射的に電車を降りた。 小学生の頃、今は亡くなった父とともに西宮球場で初めてプロ野球観戦した日のことを思い出しつつ、街を歩き始めた正秋。いつしか、かつての西宮球場跡地に建つショッピング・モールに足を踏み入れる。正秋の意識は、そこから「いつの日か来た道」へと飛んだ。四十数年前へ――。
 自分は50歳だ、と語る9歳の息子に、自分の過去を語る父親。能登半島から大阪へ出て来て、西宮北口へ。幼い頃から働き詰めに働いたのに競輪にはまってしまったこと、そこの出店で働いていた少女・安子と巡り会ったこと。彼女は在日朝鮮人で、「地上の楽園」の言葉を信じ、北朝鮮へと向かったこと。
 父と自分が見た最初で最後の試合、その代打バッター・高井選手を訪ね、そこからかつて高井選手のサインを飾ってあった球場傍の食堂を探し、正秋はそこで自分と父に宛てた一通の手紙を受け取る。差出人は李安子、彼女の長い過酷な半生を、正秋は知ることになる。その伴侶となった男性、その父親の、野球に大きく関わる生い立ちも。…
                                 (前半、帯文の文章を引用しました)


 書架に並んでいるのを見かけて、そういえばかなり前、TV番組「ビーバップ!ハイヒール」で紹介されていたな、と思い出して借りてみました。
 と言う訳でほぼ何の予備知識もなく、おお、地元じゃん懐かしい、そうそう、阪急スタジアム競輪場になってたんだよ、仁川競馬場もあるし甲子園球場もあるし、西宮どこが文教地区だよ、って思ってたよ、と気軽に読んでたら。
 …重い。
 安子さんの北朝鮮に渡ってからの人生がまぁ辛くて辛くて。
 面白くない訳ではないのですが(こういう書き方語弊があるなぁ)、とにかく読むのがしんどかった。でも手紙を出してるくらいだから、どこかで救いはある筈、と読み進めました。
 …これ、どこまで現実を入れてるんだろう。実在の選手はともかく、朝鮮初のプロ野球選手は、『ブーフーウー』オオカミ役の声優さんは。願わくば、無事に、本当にこういう作業をしていてくれればいいのに。
 今日のヘイトスピーチも何のその、その頃の日本の状態は酷いものだったんだなぁ。心にわだかまる一冊でした。