読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

銀杏手ならい 西條奈加著 祥伝社 2017年

 連作短編集。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 子供たちと一緒に己を育てていきたい。いまの私にできるのは、それだけです。
 小日向水道町にある、いちょうの大樹が看板の『銀杏堂』は、嶋村夫婦が二十五年に亘って切り盛りしてきた手習指南所。子を生せず、その家に出戻ることになった一人娘の萌は、隠居を決め込む父・承仙の跡を継ぎ、母・美津の手助けを得ながら筆子たちに読み書き算盤を教えることに。だが、親たちは女師匠と侮り、子供たちは反抗を繰り返す。彼らのことを思って為すことも、願い通りに届かない。そんなある日、手習所の前に捨てられていた赤ん坊をその胸に抱いた時、萌はその子を引き取る決心を固めるが……。
 子供たちに一対一で向き合い、寄り添う若き手習師匠の格闘の日々を、濃やかな筆致で鮮やかに描き出す珠玉の時代小説!                               (帯文より)


 銀杏手ならい
一旦嫁いだものの、子供が出来ず出戻りになった萌。実家の両親の元、『銀杏堂』と呼ばれる手習指南書で、隠居する父に代わり師匠になることに。だが素直な筆子だけではなく、女だからと嘲る悪ガキもいて…。

 捨てる神 拾う神
『銀杏堂』のシンボル、大銀杏の木の下に赤ん坊が捨てられていた。養い親が見つかるまで、預かる決意をする萌。心の底ではこの子を自分で育てたい、と思うがなかなか言葉にできない。現れた養い親候補もどう見ても水呑百姓、礼金目当てに見えてしまう。

 呑んべ師匠
師匠仲間の椎葉哲二は萌の父親の信用も厚い。だが酒浸りで風体も気にしない、物事の本質を突く椎葉が、萌は少々苦手である。商家の息子で算術が得意な伊三太が、寝食もせず算術の問答集に取り組んで周囲に心配されていると聞いた萌は、その問答集を与えた椎葉に訳を聞きに行く。

 春の声
師匠仲間の寄り合いに顔を出した萌。発起人の一人、茂子先生は厳格で己にも人にも厳しい。萌の教える学問所から移った子供も、反りが合わなくて困っているようだ。なかなか漢字が覚えられない、という子に萌は別の覚え方を考える。

 五十の手習い
教え子の信平の父親が亡くなった。茫然自失の母親と幼い弟妹を抱え、信平は手習所を辞めて働くと言う。信平は本当は、伊勢型紙を拵える型彫師になりたかったのに。

 目白坂の難
手習所に通う増之介と角太郎。下山(卒業)を目前に控えて、だが己の進む道は見えず気分は晴れない。偶然出会った桃助とその弟と共に、高価な薬草を探すことになる。なおとさちの姉妹も加わって、大名屋敷跡に行くことにした。だが広く荒れた屋敷跡で道に迷い、野犬に追われながら一晩過ごすことに。

 親ふたり
銀杏堂の周りをうろついている怪し気な男がいる。折も折、萌の育てている子供が何者かに攫われてしまった。半狂乱で探す萌の前に、赤ん坊の「産みの親だ」と名のる女まえ現れた。萌は子供の素性を知ることになる。…


 江戸時代の手習所事情が分かる一冊。
 面白かった、面白かったんですがどうも予定調和からは抜け出ないような…。安心して読める、つまりは「ハッピーエンドだよね」感が半端ない(苦笑;)。特に悲惨な話が読みたい訳ではないんですがね、山本周五郎宮部みゆきさんの作品だったら、もっと「世の中甘くないよね」「理不尽なことが沢山あるよね」と描きながらもそれでも明るい方向へ、みたいな話になったんではないだろうか、とちょっと思ってしまいました。いや、作家のそれぞれも持ち味もあるし、面白かったんですけどね(苦笑;)。