読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

八日目の蝉 角田光代著 中央公論新社 2007年

 本当に顔を見るだけのつもりだった。不倫相手の家庭の赤ちゃん、でも一人泣き叫んでいるのを見たら、抱いたら泣き止んで笑ったのを見たら。希和子は赤ん坊を連れて逃げ出した。
 友人の家へ身を寄せた後、名古屋へ。立ち退きを勧告されている地区の老女と共に暫く過ごし、奈良へ。宗教施設的にも見える、駆け込み寺として機能していた「エンジェルスホーム」で二年半を過ごす。そこが警察やマスコミの注目を集めるようになって、また逃亡。ホームで知り合いになった久美の伝手を頼り、小豆島へ。そこで子供が四歳になるまで暮らした。
 見つかった切っ掛けはアマチュアカメラマンの投稿写真、希和子は子供と引き離される瞬間まで、子供のことを気にしていた。
 十六年後。誘拐された子供は大学生になり、親元を離れて一人暮らしをしている。バイトに明け暮れる毎日、彼女の前に千草と名乗る女性が現れた。千草は「エンジェルスホーム」で一緒だったと語る。施設のことを知りたくてかつての入居者を訪ねているらしい。
 妻子ある男の子供を身ごもった娘は、千草と共に過去自分が辿った道を旅する。奈良へ、小豆島へ。…


 角田光代さんの本を読むのは初めてです。
 気分的に明るい、前向きな話を読みたいモードに入っていたらしく、前半とにかく辛かった。いやぁ、切ない! 希和子の選択は結構じれったくもあったし、でも愛情は間違いなくあるし。4000万円をホームにぽん、と渡してしまった時には、「いや、お金は大事だよ!」「半分は置いとこうよ!」と突っ込み入れたくて仕方なかったし(苦笑;)。
 後半、娘の薫サイドの話になってからはスピードが上がりました。希和子が置かれていた状況が客観的に描かれ、前半疑問に思っていた点も解消しました。いや、これ悪いの不倫相手の旦那じゃん、希和子ちゃんと別れようとしてたじゃん! どんな顔して娘たちと相対してたのやら。
 あのまま、希和子に育てられていた方が、薫は幸せだったのかな。勿論、希和子が連れ出さなければあんなにも親子関係が拗れることはなかったんですが、でも親としての適性があるとしたら、希和子の方が断然安定していたようですし。ラスト、すれ違った義理の親子を対面させてやりたかったなぁ。希和子なら、薫が生んだ子供にも、孫のように愛情を注いだに違いないから。