読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

じごくゆきっ 桜庭一樹著 集英社 2017年

 かわいいかわいい由美子ちゃんセンセ。こどもみたいな、ばかな大人。みんなの愛玩動物
 そんな由美子ちゃんの一言で、わたしと彼女は、退屈な放課後から逃げ出した。
 あまずっぱじょっぱい、青春譚――「じごくゆきっ」。

 ぼくのうつくしいユーノは、笑顔で、文句なく幸福そうだった。
 あのときの彼女は、いまどこにいるんだろうか。
 ユーノのお母さんの咆哮のような恐ろしい泣き声。
 僕はユーノにも、その母親にも追い詰められていく――「ロボトミー」。

 とある田舎町に暮らす、二人の中学生――虚弱な矢井田賢一と、巨漢の田中紗沙羅。
 紗沙羅の電話口からは、いつも何かを咀嚼する大きくて鈍い音が聞こえてくる。
 醜さを求める女子の奥底に眠る秘密とは――「脂肪遊戯」。

 7編収録の短編集。                        (出版社HPより)


 暴君
中学一年生のあたし 金堂翡翠は学校帰り、巨漢の美しい親友 田中紗沙羅と一緒に、幼馴染の男の子 三雲陸が自宅で出刃包丁が刺されたまま倒れているのを発見した。陸の妹や弟は既に死体と化しており、犯人は陸曰く「クソばばあ」――母親 聖子らしい。入院した先の病院にも、聖子は押し掛けて来て陸を殺そうとした。陸を助けるため、紗沙羅は迷うことなく聖子を刺す。

 ビザール
転職先にいた隣の課の課長 更田さんは、自分と同郷だった。七年前に土砂災害でなくなった、山陰の町。近田カノはなりゆきで、二人の男と二股で付き合うようになる。ある日唐突に、ヤクザの抗争に出くわし、重傷を負ってしまった更田さん。その日から、故郷の田舎町のことをまるでその場にいるかのように語り始める。もう二度と思い出したくもないその町を。

 A
50年前に絶滅した、アイドルと呼ばれる存在。最後のカリスマと呼ばれた老女は、美しい少女の身体とリンクして、再び舞台に立つことになる。本人は銀色のコードに繋がれたまま。

 ロボトミー
施設で育ったぼくには、ユーノと母親の関係が、一般的な物かそうでないものか分からなかった。新婚家庭に上がり込んで、夜も延々と電話を掛けて来る義母。半年後、とうとう離婚した後でも、義母はぼくの新しい職場や住所を突き止めて連絡を取って来る。

 じごくゆきっ
一年C組副担任の中村由美子先生と、私は駆け落ちした。ピンクハウスの服を着て、途中「夢千代の里」で一泊して、鳥取砂丘を見に。

 ゴッドレス
同性愛者の父親に、父親の恋人と結婚するように言われた。美しく我儘で、人の言うことを聞かない父親。暴力癖があることは黙っていて欲しい、という。やがてその恋人が死体で見つかり、ニノは自分がその男を殺したという妄想に襲われはじめる。

 脂肪遊戯
幼馴染の紗沙羅は夜中、ぼくと電話で話しながら、ずっと何かを食べ続けている。彼女は言う、食べ続けていないと痩せてしまうのだと。この脂肪が自分を守っているのだと。…
 

 読み始めてすぐ、「そうそう、これこれ!」と膝を打つ思いでした。
 そうそう、このひりつく焦燥感、私が桜庭作品を読み始めた頃、惹かれた独特の世界。桜庭さんの描く中学生の女の子、ってのは別格だと思う。申し訳ないけど、他の作品よりやっぱり好き。
 とか言いながら、帯文にもあった『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』の後日談、ってのが分からなくてですね; 自分の過去記事を読み返してもみたんですが、やっぱり思い出せない。田中紗沙羅とかってキャラクター、いたっけ?? 舞台が同じ、ってだけなのかな。
 でもこの紗沙羅のキャラクターが本当によくて。太っている美少女、ってだけでインパクト絶大、何故かユーモラス。ビジュアルとして浮かんだのが魔夜峰央著『パタリロ!』で、パタリロがほっぺ隠して美少年に化ける、ってあの絵を黒髪おかっぱにした状態で。…いや、だからユーモラスだったのか; 勿論この体形には切実な理由があるのですが。
 久々、桜庭作品の原点を見た思いでした。