読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

クローバーナイト 辻村深月著 光文社 2016年

 連作短編集。
 ネタばれあります、すみません;

 Chapter_O1 イケダン、見つけた?
鶴峯裕は公認会計士。大学時代から付き合っていた志保と結婚して、現在は4歳の莉枝未、2歳の琉大の二人の子持ち。起業した志保と協力して子育てに追われる日々、今日も保育園へ子供たちを迎えに行く。
莉枝未の友達、未來ちゃんのお母さんに不倫の噂があるのだとか。別のママ友に間違って送られてきたメールが、いかにも不穏なものだったらしい。話を聞くうち、裕は別の可能性に思い当たる。

 Chapter_O2 ホカツの国
裕の得意先の若社長の奥さんが、仕事に復帰したいのに子供を預ける保育園が見つからなくて困っているという。自分たちの経験談を話してくれ、と言われて夫婦で会ってみると、確かにかなり思い詰めている様子、とうとう偽装離婚して保育園入園への優先順位を上げる、という手段を決意したらしい。だが裕は、同僚の一言を切っ掛けに、若社長の別の思惑に気付いてしまう。

 Chapter_O3 お受験の城
久しぶりに会った大学時代の女友達 由依は、すっかりセレブなママになっていた。子供を通わせている幼稚園はお受験で有名な所、彼女も大変だと言いながらお受験対策を楽しんでいる風にも見える。だがある日、裕がふと見かけた由依の姿は、他のママ友から距離を置かれているようだった。一体何があったのか。

 Chapter_O4 お誕生会の島
他の幼稚園から来たばかりの琳ちゃんは、お誕生日を訊かれても答えないし、でもまだ5歳になっていないという。お母さんも「誕生日の写真を貼り出したくない」と言ったり、何か誕生会にわだかまりがある様子。裕の言葉に、志保はある可能性に思い当たる。

 Chapter_O5 秘密のない夫婦
台湾出張中、志保に長い電話があったという。しかも息子の名前を出したとか。思わず浮気を疑う裕だが、もう一人、遠慮のない電話を掛けて来る相手に思い当たる。志保の母親は、それらしい無遠慮さで琉大の言葉の遅さを指摘していた。…


 出だしの保育園への迎えを忘れるエピソード、どこかで聞いたことあるなぁと思ったら、以前読んだエッセイにあった夢の話ですね。う~ん、辻村さん、ただでは起きないなぁ(笑)。
 面白かったです。まさしく日常の謎、でもこんな些細なことの積み重ねで誤解が誤解を生んで妙な噂になっていくんだろうな、と思ったり。
 ただ、内容的にあまりハッピーにはなれなくてですね; 何しろ内容が結構重い;; どれもこれも、今日本で子育てするってこんなに大変なことなの??と暗くなってくるような(苦笑;)。それに付け込んで自分の欲望(?)を成就させようとした第二話の若社長なんかは、もう突っ込み所満載でしたね、何無責任なことやろうとしてんだ、いい加減にしろ、って感じで。
 第二子の誕生を素直に祝えなかったり、母親の呪縛から抜けられなかったり。自身が親になることも大変ですが、親への対処も大変そうです。
 そうそう、私が聞いたことのある外国のことわざってのは、「小さい間は家具を傷つけ、大きくなったら親の心を傷つける」って文言でしたけど、子供から見たら「人生の前半は親に、後半は子供に台無しにされる」なんですね。…家具の方が平和だなぁ。