読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

モダン 原田マハ著 文藝春秋 2015年

 短編集。

 ニューヨークの中心、マンハッタンに存在し、1920年代から「ザ・モダン」と呼ばれたモダンアートの殿堂。それが「MoMAニューヨーク近代美術館。近現代美術、工業デザインなどを収集し、20世紀以降の美術の発展と普及に多大な貢献をしてきたこの美術館を舞台に、そこにたずさわる人々に起きる5つの出来事を描いた自らの美術小説の原点にとりまくんだ美術小説短編集がついに刊行。

 『楽園のカンヴァス』で、山本周五郎賞を受賞、本屋大賞三位を獲得した原田マハが、半年間勤務し、『楽園のカンヴァス』でも重要なモチーフとなった〈ルソー〉の「夢」も所蔵する「MoMA」が舞台。『楽園のカンヴァス』とは、世界観を共有し、その作中人物も登場。               (出版社HPより)


 中断された展覧会の記憶 Christina's Will
MoMAニューヨーク近代美術館に展覧会ディレクターとして勤める杏子は、3月11日、夫の声で目覚める。TVには信じられない光景、濁流に吞み込まれる町が映っていた。その期間、MoMAアメリカの国民的画家アンドリュー・ワイエスの『クリスティーナの世界』を、ふくしま近代美術館に貸し出していた。

 ロックフェラー・ギャラリーの幽霊 Ghost in the Blanchette Hooker Rockfeller Gallery
スコット・スミスMoMAの監視員、仕事は「ヴィジターを、敬意をもって疑うこと」。ある日、閉館間際にピカソの『アヴィニヨンの娘たち」の前に佇む青年を見かける。以来、何回か言葉を交わすことになる青年は、気が付くと姿を消していた。

 私の好きなマシン My favorite machine art
ジュリア・トンプソンは、8歳の頃、MoMAのマシン・アート展に啓示を受け、長じてインダストリアルデザイナーになった。その企画を立ち上げた初代館長アルフレッド・バーの訃報を受けて、ジュリアは彼との出会いを思い出す。

 新しい出口 Exit between Matisse and Picasso
9.11で、アシスタントキュレイターのローラ・ハモンドは同僚で親友のセシル・アボットを喪った。彼女を自分の身代わりで死んだかのように感じ、PTSDに掛ったローラは、セシルも楽しみにしていた企画「マティス ピカソ」展が動き出したのを見届けるようにMoMAを辞める。

 あえてよかった Happy to see you
研修でMoMAに派遣された森川麻美は、美術館に併設されたデザインストアのウィンドウに飾ってある箸のディスプレイ方法が気になって仕方ない。麻美は自分の面倒を見てくれている秘書のパティに、ためらいながら相談する。…


 どこまで事実なんだろう、というのが第一印象。あの当時、福島で<アンドリュー・ワイエスの世界>展は開かれていたんだろうか、足跡アートは存在するんだろうか、『マティス ピカソ』展は実際あったんだろうか。本の末尾には「協力 福島県立美術館」のとはあるのですが。
 以前読んだ『楽園のカンヴァス』は知らないことを教えて貰った作品でしたが、今回は、そういう知識もありつつも、人々の感情の機微をメインに描いたような作品群。どれも面白く読み易かったんですが、何だか重いものが残る感じ。勿論最後には希望もあります。