読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ギャラリスト 里見蘭著 中央公論新社 2015年

 ネタばれあります、すみません;

 日本画最後の巨匠・門馬岳雲の作品が、クリスティーズのオークションで大量に売り飛ばされた。それも、日本では考えられない安値で。長年、門馬を育て、支えて来た画商・片瀬幸蔵は息子・真治を伴い、イギリスに飛ぶ。真治の反対を押し切って、門馬の作品を高値で落札し続けた。だが、無理が祟って、元々悪かった心臓の所為もあり死亡してしまう。幸蔵の倉庫には、高値過ぎて相続できない門馬の作品群と、明らかに類まれなる良作なのに作者の分からない日本画が遺されていた。
 オークションの仕掛け人は、天才ファンドマネージャー・江波志帆。これを契機として日本の美術市場は暴落した。志帆は画商に搾取されているアーティストたちを次々に引き抜き、国内ではなく海外を舞台に売り出しを掛ける。
 閉塞的な日本の美術市場を憎んでいるかのような志帆は、やがて真治に近付いてくる。曰く、自分の恋人だった村田壮史郎の絵を幸蔵は持っていた筈だ、それを譲ってほしい、と。村田は門馬の弟子の一人で、門馬の為に幸蔵とぐるになって飼い殺しにされたのだ、と。
 自身も売り出したい作家を抱えて金を必要としていた真治は、村田の絵を三千万で売る、と志帆に持ち掛ける。元々幸蔵が不当に所持していたものだ、と知っている志帆には納得できる交渉ではない。志帆は真治に宣戦布告を言い渡し、真治は真治で危ない橋を渡って資金集めに奔走することになる。…


 そういえば漫画『ギャラリーフェイク』でも、日本画の巨匠は日本でしか認められてない、みたいな記述があったっけ。
 面白かったです。もしかしたら詳しい人は「こんなの嘘だぁ」と思うような内容なのかもしれないけど。でも、日本画家が妙に世襲制的な感じになってるのは私も不思議だったし。
 もし真治が、「村田の絵を担保に三千万円貸してくれ」と志帆に持ち掛けていたら、話は変わっていたのかなぁ。息子にしたら父親の所業なんて知らない訳で、彼は彼なりに真摯に芸術に向き合っていたようだし、ここまでされる必要はなかったような…。そりゃ素行に問題はあったけど(苦笑;)。
 バリ島に日本画の美術館、って保存状態保つのににかなり経費がかかりそうな…。自分が死んだ後のことは、志帆は考えてるのかなぁ。
 中国人が自国の作品を爆買いしているという現状を、私はあまり品がいい行動とは思っていなかったんですが、それがいずれ世界的な中国作品の評価に繋がる、という見方には目から鱗、でした。日本もバブル期に、ゴッホだのなんだの海外作品を買い漁らず、自国の作品を買い戻すべきだったんだなぁ。
 岡本太郎作品が海外であまり知られていない、というのにも驚きました。…え、日本だけなの? ピカソとも交流があったんじゃなかったっけ、交流があっただけ??
 いや、色々勉強になりました。