読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

古書カフェすみれ屋と本のソムリエ だいわ文庫 里見蘭著 2016年

 「僕は信じてるんです。たった一冊の本が、ときには人の一生を変えてしまうこともあるって」
 すみれ屋で古書スペースを担当する紙野君が差し出す本をきっかけに、謎は解け、トラブルは解決し、恋人たちは忘れていた想いに気付く──。
 オーナーのすみれが心をこめて作る絶品カフェごはんと共に供されるのは、まるでソムリエが選ぶ極上のワインのように心をとらえて離さない5つの小さな謎。
 きっと読み返したくなる名著と美味しい料理が愉しめる古書カフェすみれ屋へようこそ!
 本を愛するすべての人へ贈るミステリー!                      (出版社紹介文より)


恋人たちの贈りもの
 古書カフェすみれ屋がオープンして三か月、クリスマスの頃。
 常連客の高原君が悩んでいた。年上の恋人美雪さんにプロポーズしたいが、高原君は売れないミュージシャン、だが美雪さんは早くに父親を亡くし、再婚した母親と別れて育った苦労人、結婚の条件は「安定した生活」。美雪さんに言い寄っている男もいるとかで気が気ではない。夢をあきらめて就職するべきか迷う高原君に、古書スペースを担当する紙野君はある音楽雑誌を差し出す。同じく、高原君と付き合い続けるべきか迷う美雪にもO・ヘンリの短編集を。

ランチタイムに待ちぼうけ
 忙しいランチ時、コーヒー一杯だけでテーブル席を占拠した60歳代の紳士。「待ち合わせだ」と言うが相手が来ないまま、同じことを三回繰り返した。三回とも偶然一緒になった近所のママ友グループにそのことを指摘され、老紳士は激怒する。古書スペースにあった荒木経惟の写真集『センチメンタルな旅・冬の旅』にも。

百万円の本
 シングルマザーの香奈子さんは、子供の健太君が再婚相手の夫に懐いてくれないことを憂いている。健太君の愛読書は『にんじん』、今日もピーナッツバターサンデーを頬張りながら夢中で読んでいる。健太君の通う学校のプールに、ガラスの破片が入れてあったという事件が二度続いた後、紙野君は香奈子さんに児童書『小さなバイキング』を薦める。

火曜の夜と水曜の夜
 火曜の夜の男性客は、すみれ屋のカウンター席で隣り合わせて意気投合したらしい。弾む会話を漏れ聞くと、うち一人馬場さんは奥さんの料理の詰めの甘さに多少の不満を抱いているようだ。
 水曜の夜の二人連れの女性客は、偶然火曜の夜の男性客の関係者だった。旦那さんに「おふくろの味」と比べられて悩んでいるという。紙野君は彼女に、『料理歳時記』をそっと差し出した。

自由帳の三日月猫
 すみれ屋オープンから一年半と少し。
 自由帳に猫のイラストと共に不思議な文字の羅列が書かれていた。何かの暗号のようだが、解読方法も書き込んだ人も分からない。お客の一人晴香さんは、これは自分の家の猫だ、という。先日死んでしまった飼い猫の特徴にそっくりだと。話を聞いた紙野君は、ポール・ギャリコ著『猫語の教科書』を持ってくる。それをヒントに暗号を解いた晴香さんは、却ってその言葉に怯えてしまった。飼い猫の最期を、あまりにもよく知っている描写に。…


 失礼ながら、そんなに有名な作家さんじゃないと思うのに、予約が20人以上ついていまして(いや、私は3番目くらいに滑り込めたんですけど)。文庫書下ろしでどこかに連載されてた訳じゃないのにどうして、と不思議だったんですが、読んでみてわかりました。これ、どこかのメディアできっと紹介されたんだわ。
 美味しい料理やスイーツデザートに飲み物、本の知識に日常の謎、おまけに30代半ばの仕事はできるけどちょっと鈍めの主人公を(多分)慕ってくれてる年下の青年、最終的には猫まで出てきて、…どれだけ詰め込むんだ??、もうあざといほど(苦笑;)。
 ここで紹介されているカフェごはんは、かなりこってりたっぷり、肉々しかったりクリーミーだったり。デザートも「甘そうだなぁ」というのが多くて、正直、私の個人的な好みからはちょっとずれてたんですが、でもコンビーフを一から作るとかは「考えたこともなかった!」でした。これ、シリーズ化されたり映像化されたりしたら(なりそうなんだけど)、レシピ本とか関連書籍山ほど出そう。
 私が昔読んだ『にんじん』はイラスト付きの文庫本でしたが、あれは完訳本じゃなかったのかな。「ベッドの下にトイレ用の壺を置き忘れる」とかのエピソードは覚えてたんですが、名付け親のおじいさんがみみずを食べてた、とかは記憶にないなぁ。
 小さい頃見てたアニメ『小さなバイキング ビッケ』や映画『ポセイドン・アドベンチャー』に原作があった、ってのも知りませんでした。
 古書店なのにそんなにメジャーとも思えない本の在庫が何冊もある不思議とか、食べながら読んでたら売り物汚さないかしらとか、調理時の煙とかで本痛まないかなとか、登場人物に関してもそれだけ文句あるなら自分でご飯作ったらいいのにとこっそり思ったり、謎についてもかなり手前で真相に察しがついたり、色々突っ込みたい所はあったんですが、面白かったです。…いや、本当(笑)。