読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

修道女フィデルマの叡智――修道女フィデルマ短編集―― ピーター・トレメイン著/甲斐萬里江訳 東京創元社 2009年

 7世紀、法廷弁護士にして裁判官の資格を持つ美貌の修道女フィデルマが、もつれた事件の謎を痛快に解き明かす短編集。英国での出版は2000年。
 

聖餐式の毒杯
 巡礼として訪れたローマの教会で、聖餐杯のワインを飲んだ若者が急死した。居合わせたフィデルマが急遽謎を解く。

ホロフェルネスの幕舎
 幼馴染のリアダーンが、夫と息子を殺した犯人として告発された。急遽駆け付けたフィデルマは、彼女の窮地を救うため聞き込みを開始する。

旅籠の幽霊
 吹雪の夜、偶然立ち寄った宿で、フィデルマは幽霊騒ぎに巻き込まれる。亡夫の吹くバグパイプの音に悩まされれているという女将の境遇を聞いた夜中、フィデルマもその演奏を聞き、宿の中を徘徊する何者かの気配を感じる。

大王の剣
 アイルランドの大王(ハイ・キング)の王位継承に必要な宝剣“カラハーログ”が盗まれた。疑われたのは第二王位継承権を持つアリール、宝剣が保管されていた教会の聖堂の中、壊れた木櫃の前に立つ尽くしていたという。自分は嵌められたと証言するアリール、フィデルマもあまりにも揃い過ぎた状況に疑問を抱く。

大王廟の悲鳴
 アイルランド代々の大王の廟所の中から悲鳴が聞こえた。千五百年もの間、一度も開かれていない墓からの叫び声に、墓守も警護隊も怯えている。フィデルマの命で開けられた扉の内側には、死んだばかりの男の遺体が転がっていた。墓所の内部の様子から、フィデルマは真相を解明する。…


 やはり職場の女の子が貸してくれた一冊。前の本が『ママは何でも知っている』の「美味しいもの」に特化していたとすれば、こちらは宗教関連メインで薦めてくれたような。
 読み始め、舞台が7世紀ということに気が付かなくてですね、「カソリックってこんな感じなのか??」と思いながら読んでました。「例え毒の入った酒杯でも、司祭が聖別を施すことによって聖体となれば、キリストの血に化体していた筈」「だから聖別した司祭が悪い」という修道院長の理屈には心底驚きました。殺された信者にも、刺激臭のあるようなワインを飲むなよ、と思ってしまいましたし。さすがに今ではそれはないんでしょうけど。
 フィデルマが犯した殺人に対してあまり罪悪感がなさそう、ってのにも「時代のせいかなぁ」と思ったり。
 同性愛だの宗教解釈という今日的なテーマも含みつつ、謎自体の面白さより昔のアイルランドの文化というか風習というかの面白さの方が勝る感じ。ちゃんと女性も活躍できる世界だったんですね。
 それにしても、ここでも赤毛と言えば緑色の目なんだなぁ。