読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

晴追町には、ひまりさんがいる。 はじまりの春は犬を連れた人妻と 野村美月著 講談社タイガ 2015年

 連作短編集。

はじまりの物語 眠れない春近が、犬を連れた人妻と朝を迎えること
 2月。今までそつなく人生をこなしてきた木村春近が大学受験で失敗し、それでも二次募集で受かった大学に、千葉の実家から2時間かけての通学を、1年で断念して晴追町で一人暮らしを始めた頃。
 眠れない夜、散歩に出かけた公園で、春近は犬を連れた奥さんひまりさんに出会う。恵方巻きのお弁当を食べ、鬼ごっこをしているうち、春近は心の鬱屈をひまりさんに打ち明けていた。

第一話 大学のサークルに入会した春近と、そこで知り合った巴崎さんの愛情物語
 3月。通学でいっぱいいっぱいだった1年を過ぎて、サークル『万歳会』に入会する羽目になった春近。そこで知り合った無愛想な同級生・巴崎笑麻は、この大学にいた想い人を亡くしてしまった、という過去を持っていた。彼女の行動を見ていると、後追い自殺を考えているのではないか、と春近には思えてくる。

第二話 幼稚園の怖くて大魔王な園長先生の話
 4月。ことり幼稚園の園長先生が代替わりした。所が年齢不詳の新園長・小鳥遊先生は強面で愛想なしで子供も懐かず、父兄の評判も宜しくない。何だかんだで、春近がひと肌脱ぐことに。

第三話 春近の先輩の彼女が吸血鬼になった話
 5月。高校からの先輩・飯塚天馬が、春近に泣きついてきた。曰く、自分の彼女が吸血鬼になってしまった、と。極端に日光を嫌がり、夜の居酒屋でバイトを始めた、自分も避けられているとの報告に、天馬の鬱陶しさを彼女が嫌がっているだけではないか、との疑問が拭えない春近。だが理由はそうではないようで…。

第四話 春近とひまりが、つかのま接近する話
 6月。ひまりと一緒に、晴追町を観光することになった春近。ひまりに接近しようとすると、犬の有海さんが邪魔をする。やがて、春近はひまりさんと旦那さんとの馴れ初めを聞くことに。
 
そして、続いてゆく物語 春近が帰省し、有海さんが一晩だけ帰ってくる話
 7月。春近は実家に帰省した。優しく変わった自分を自覚した日、晴追町ではひまりさんの旦那さん・有海さんが一晩だけひまりさんの元に帰って来ていた。…


 ポメラニアンのご先祖ってサモエド犬だったのか…!(←そこ!?)
 『犬を連れた奥さん』ってったらチェーホフ?と思ってたら『めぞん一刻』の方だったようで。
 ほのぼのとした語り口、でもひまりさん自体の謎は解明されないまま。このままでは旦那さん、何かの呪いで犬に変わってしまったとかでもありえるんですが、そんな世界観じゃないよね??
 おそらく春近くんの恋は叶わない、淡い哀しみが全体を薄く覆っているようです。
 シリーズ、になるんだろうなぁ。どんなラストになるのかなぁ。