読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

消滅――VANISHING POINT 恩田陸著 中央公論新社 2015年

 202X年9月30日の午後。日本の某空港に各国からの便が到着した。超巨大台風の接近のため離着陸は混乱、さらには通信障害が発生。そして入国審査で止められた11人(+1匹)が、「別室」に連行される。この中に、「消滅」というコードネームのテロを起こす人物がいるというのだ。
 マレーシア帰りのエンジニア、「日に焼けた男」小津康久。
 鳥の巣のような髪型をした長身の青年、伊丹十時、天文学者
 触った相手の心が読めるらしい男の子とその母親。母親は常に何かに怯えているような雰囲気を湛えている。
 その少年に何故か気に入られ、引き留められることになってしまった大島凪人。本人にその気はないが不審者に見られてしまう風貌を持つ。離婚歴あり、娘が一人いる。
 岡本喜良、ヘッドフォンの男。飛行機に乗るのが大好きで、その渡航履歴からあらぬ疑いをかけられてしまった工業デザイナー。
 三隅渓、医師。赤い眼鏡をかけたガラガラ声の中年の女。僻地の医療活動に勤しんでいる。
 成瀬幹柾。甥の結婚式に出席するためにロサンゼルスから帰国した豆腐屋、ごま塩頭の男。
 シンガポール帰りのぽっちゃりした上品そうな婦人。しきりに夫に連絡を取りたがる。
 皮肉屋だが妙に的を射た発言をする冴えない中年男。自分のことを語りたがらない。
 何故か空港に紛れ込んでいだコーギー犬
 別室には天才プログラマ- ベンジャミン・リー・スコット。文章の癖から書いた本人を特定するソフト ゴートゥヘルリークスを開発して、アメリカ当局から指名手配を受けている。十時の幼馴染らしい。
 容疑者の共通点は4月29日、JR品川駅前のコーヒーショップでコーヒーを購入していること。
 一見人間と区別がつかない女性型ロボット キャスリンを狂言回しに、探りあいが始まる。
 迫る台風、高潮警報、避難勧告。原因不明の新型肺炎『孤独な肺炎』。
 テロとはバイオテロなのか、通信障害のことなのか、爆弾テロなのか。「消滅」の意味する所は。
 世間から孤絶した空港内で、緊迫の「テロリスト探し」が始まる。…            (帯文に付け足しました)


 恩田さんお得意の密室劇、舞台になりそうな設定。
 やっぱり好き(笑)。
 いや、真相は拍子抜けな気もしないではないんですが、でもそれまでの遣り取りが楽しい。緊迫した状況の筈なのに、脱線していく会話、妙にのんびりした登場人物たち。これはキャスリンのおかげもあるでしょうね、清涼剤になるかと思いきやいきなりホラーの様相も呈する。秘密を抱えていた人物たちの素性も明らかになって、その点はちゃんとミステリでしたし。
 分厚い本でしたが、すらすら読めました。