読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

お葬式 遠田潤子著 角川春樹事務所 2015年

 自慢の父が死んだ。百合の花を買いに出かけて、自動車事故を起こした。スマートで優しくて人当たりのいい、映画やドラマの中にしか存在しないような理想的な父、和彦。遺品を整理していた息子・片瀬在(ある)は、何も書き込まれていない母子手帳を見つける。子供の名前は確かに自分だが、母親の氏名欄には見知らぬ「森下翠」の記述、生年月日もあわない。父親にはもう一人、恋人や生まれなかった赤ん坊がいたのだろうか。自分はその代わりなのだろうか。二年前亡くなった母は、本当に愛されていたのだろうか。
 父が死んだ暴風雨の日、家の前に佇んでいたセーラー服の少女も気になる。後日、その少女・森下水樹を見かけた在は、話を聞いて愕然とする。父は高校生の頃、同級生の女の子・森下翠を妊娠させたらしい。以来、同棲状態だった翠はトラック事故で死ぬが、その時彼女は裸足だったとか。
 水樹にとって伯母に当たる翠は今も彼女の家に影を落とし、祖母も父も恨みと後悔に捕らわれて水樹を拘束している。詳しい話が知りたいと水樹は和彦を訪ねたが、和彦は、翠の死の責任は自分にある、と言ったきり多くを語らなかったらしい。
 顧問弁護士、翠の友人、水樹の父や同級生。父や翠の過去の話を聞き、翠の日記も合わせて読む在。リフォームを繰り返したわが家、無愛想だった筈の父の変容。やがて、徐々に父親の過去が見えて来る。…


 この作家さんの雰囲気って独特だなあ。多分、作者名を伏せられて読み始めても、「あ、あの人の作品だ」って察しがつくと思う。今から不幸な過去を持つ人のドラマチックな話がはじまりますよ、って言う空気感が半端ない。一気に読んでしまう。
 多少都合のよい展開だった気もしないではなかったですが、面白かったです。なんでこう頑なな人ばかりが出て来るのか。もう途中で自分の中で折り合いをつけて、前向きに生きた方が楽だと思うんですが、でもそうすると成長はないかもなぁ(苦笑;)。
 この題名には多少違和感がありました。ラスト近辺でああそれで、という展開にはなりましたが、それでも弱い気がするなぁ。年代的なものか、有名な同名の映画をまず連想してしまうので。文庫化とかの時に、改題した方がいいんじゃないかなぁ。