読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

荒神 宮部みゆき著 朝日新聞出版 2014年

 2013年朝日新聞に連載された作品。
 ネタばれになってるかも、すみません;

 徳川綱吉の治世。
 永津野蕃藩主側近 曽谷弾正の妹・朱音は一人の少年を拾う。命からがら、背中に酷い傷を負った少年は隣りの香山蕃から逃げてきたらしい。気がついた少年・蓑吉は何か恐ろしいものに襲われた、と証言する。にわかには信じ難い言葉だったが、やがてその化物は、永津野と香山の国境にある永津野の砦を襲い始める。その頃香山蕃は、藩主・瓜生家の幼い世継が身罷り、藩主小姓の小日向直弥に、その咎が問われようとしていた。
 隣り合う蕃の長年の確執と怨念が混ざり合い、とんでもない化物が産まれた。その責は自分にある、と語る朱音。朱音は自分の身を贄に、化物を止めようと決意する。…


 新聞連載中一応読んでいたのですが、改めて読んで気が付きました。…そうか、これってほんの数日の出来事だったのね~。
 冒頭に、舞台となった場所の地図が載っていたのでまずびっくり。具体的にモデルのあるお話だったとは思いもしませんでした。
 新聞連載だっただけあって、挿絵に影響を受けていた部分が随分あったんだな、と改めて自覚しました。朱音やら蓑吉やら、人物の造形はそのままこうの史代さんの絵で浮かびましたし、でもその分、化物が倒される状況が今回独自に浮かびましたね。朱音が呑まれて化物の外見が変わる当たりって、白く滑らかになる、ってのは確かにそうだったんだけど、あんなに人に近い造型になってたのね。実は連想したのはアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の1シーン。巨大なレイが起き上がる、あの辺りを思い浮かべました。いいところまでやっつけると何段階かパワーアップする、ってのは何かのゲームのラスボスのよう(笑)。
 大きな加筆は最後の方が多かったですよね。香山蕃で盗まれた絵馬の内容、ってのは連載中にも明らかになっていましたが、直弥が罹った風土病「かんどり」の正体にまで言及されているとは。でもこれですっきりしたなぁ。あそこは確かに消化不良だったんですよ。やじの正体はいまだにちょっと消化不良ですけど(苦笑;)。
 謎の絵師 菊池圓秀も何だか可哀想なことになってしまったんですね。最後に描いた最高傑作には何を描いていたのか。…やっぱり朱音さんを呑んだ荒神なんだろうなぁ。美しかったそうだから。