連作短編集。海に近い城下町で起きる怪異譚。
ネタばれになってるかも、すみません;
ネタばれになってるかも、すみません;
奥庭より
死んだ叔母の家を継いだはいいものの、奥の座敷の襖がいつの間にやら開いているのが不可解だ。襖の前にはまるでそこを塞ぐような形で桐箪笥が二棹。しかも、開いた襖から白い手のようなものが覗いているのを、祥子は見てしまった。祥子は叔母の馴染みだったらしい工務店に連絡を取り、座敷を閉じようとするが、棟梁の隈田はそれを止める。叔母もそれをしたが「中の人」はかえって暴れた、と。 途方に暮れる祥子に、隈田は尾端という営繕屋を紹介する。
屋根裏に
年老いた母が、屋根裏に誰かいる、という。無駄に気位の高い家に嫁いで苦労した母がいよいよ惚けたか、と覚悟する晃司。妻の勧めもあってリフォームをしたら、屋根裏から瓦が一枚出てきた。昔、瓦の葺き替えをした時に、竹籠と一緒に出てきた瓦。以来、幼い娘まで、黒い何かが見えると言い始めた。
雨の鈴
黒尽くめの喪服のような着物を着た女が、雨の日になるといる。有扶子はやがて、彼女が現れるたびに路地の曲がり角までつき当って進んでいることに気付く。喪服の女が訪れた家には、死人が出ると言う都市伝説。実際そういう目にあって家を逃げ出した、という女性に会って、有扶子は戦慄する。彼女が現れるとしたら、次は有扶子の家の前に来てしまうから。
異形のひと
都会から引っ越してきて、家の鍵もかけない田舎暮らしに、中学生の真菜香はうんざりしている。今日も知らないおじいさんが家に入り込んでお菓子を漁っていた。そう思っていたのに、どうやらそのおじいさんが見えるのは真菜香だけらしい。
潮満ちの井戸
祖母の家を引き継いだ麻理子。夫の和志はガーデニングに凝り始めた。裏庭にあった井戸を復活させ、しかしその傍にあった小さな祠のようなものを潰してしまう。以来、井戸水を遣った植物は枯れ始め、周囲には腥い臭いが立ち込めるようになる。呼んだ庭師の堂原は逃げるように去り、代わりに尾端と名乗る営繕屋を寄こした。
檻の外
麻美がガレージから車を出そうとすると、エンジンがかからない。交通の便の悪い古い城下町で、シングルマザーの麻美にとって車は必需品。この中古車を仲介してくれた後輩の男の子に、文句を垂れる毎日。やがて小さな男の子の姿が見えて、麻美は震え上がる。事故車なのかと疑ったが、問題はガレージにあった。… 「営繕」という言葉は始めて知りました。リフォームではないのよね、改善する内容が内容だから。
怪異のあれこれを、妙に理詰めで解決するのが気持ちいい。具体的な改修内容が提示されてないお話もあるんですが、記述されているものには一々なるほど、と思いました。
悪霊が直進しかできない、とかいうのは前にも聞いたことがあるような。沖縄の門を入った所にある魔よけの壁とか、そういう意味じゃなかったっけ。そういえば私の家も道の突き当り、丁字路に位置する場所にあるのですが、そこに門というか玄関というかはなかったなぁ。家相というか、意図的なものだったのかしら。
このごろの短編集って一つ一つは独立しながらも全体で一つの話、っていう作りが多い気がするんですが、この作品はまさしくどこから読んでも大丈夫(笑)。尾端の正体というか生い立ちというかが語られることもなく、淡々と事象が片付いて行きます。いっそ潔い。
表紙画が『蟲師』の漆原友紀さん、これどういう風なイラストなんだろう、何枚か描いて貰って、装丁で組み合わせたんだろうか。祖父江慎さんが一枚噛んでいる様子ですし、物陰から覗いているような文字のレイアウトとか、とにかく凝ってる。
それにしても小野さん、きっと『劇的ビフォーアフター』好きだろうなぁ。
怪異のあれこれを、妙に理詰めで解決するのが気持ちいい。具体的な改修内容が提示されてないお話もあるんですが、記述されているものには一々なるほど、と思いました。
悪霊が直進しかできない、とかいうのは前にも聞いたことがあるような。沖縄の門を入った所にある魔よけの壁とか、そういう意味じゃなかったっけ。そういえば私の家も道の突き当り、丁字路に位置する場所にあるのですが、そこに門というか玄関というかはなかったなぁ。家相というか、意図的なものだったのかしら。
このごろの短編集って一つ一つは独立しながらも全体で一つの話、っていう作りが多い気がするんですが、この作品はまさしくどこから読んでも大丈夫(笑)。尾端の正体というか生い立ちというかが語られることもなく、淡々と事象が片付いて行きます。いっそ潔い。
表紙画が『蟲師』の漆原友紀さん、これどういう風なイラストなんだろう、何枚か描いて貰って、装丁で組み合わせたんだろうか。祖父江慎さんが一枚噛んでいる様子ですし、物陰から覗いているような文字のレイアウトとか、とにかく凝ってる。
それにしても小野さん、きっと『劇的ビフォーアフター』好きだろうなぁ。