読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

火怨 北の燿星アテルイ 下 高橋克彦著 講談社 1999年

 ネタばれあります、すみません;

 789年、戦の中休みを利用して、阿弖流為たちはっこっそり都を訪れる。坂上田村麻呂にも遭遇し、お互いの度量を認め合った東北への帰り道、阿弖流為たちは東日流(つがる)の赤頭の不穏な動きを耳にする。戦の前線から遠い東日流は、独自に外国とも貿易を行って豊かさを享受しており、朝廷の横暴への危機感も薄かった。
 もし赤頭からの協定の申し入れがあったとしても罠だと感じるよう、阿弖流為たちは朝廷軍に赤頭に対する不信感を植え付ける。一方で次の戦に向けて、束稲山の山中に小さな砦を三十も作り、敵の十万の兵を分散させる戦略を立てる。
 蝦夷に対して慎重になる田村麻呂。動かない田村麻呂に対し朝廷軍は内部分裂を起こし、焦って砦攻めに走って完敗を来す。
 しかし、阿弖流為はこの限のない戦いに限界を感じ初めていた。やがて、田村麻呂の耳に蝦夷分裂の噂が入って来る。20年もの永い戦に飽きた民が阿弖流為を見放し始めた、阿弖流為たちが孤立していると言うもの。朝廷はとうとう阿弖流為軍だけを敵とし、その他の蝦夷の豪族たちと手を組み始める。それこそが、阿弖流為の望んだ和議に代わるものだった。阿弖流為は、自分たちだけが殺されるために小さな戦いを繰り返す。…


 これ、どこまで史実なんだろう。これが本当だとしたら、アテルイ、かっこよすぎる。
 戦の内容とか、最後に阿弖流為が孤立して、ってのは本当だろうけど、それが計画通りなのか違うのか。ドラマとしては「こんなに民のために闘ってきたのに」という絶望感、悲壮感を描くこともできた筈で、それをこんな充足感たっぷりに描いたのは高橋さんの解釈ならではなんだろうなぁ。
 あだち充さんが自分の作品を「あだち一座が演じてる」と表現されてますが、高橋さんの作品でも、それは感じることがあります。男気のある主人公、賢者に熱血漢、バックアップ要員に最終的には味方になるような魅力的な敵役。いやぁ、熱い作品でした。