読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

物語ること、生きること 上橋菜穂子著 瀧晴巳構成・文 講談社 2013年

 大好きなことを仕事に出来たら、どんなにいいだろう。
 みなさんの中にも、そんな憧れを抱いている人がきっといると思います。
 私も、そんなひとりでした。
 子どもの頃から、たくさんの物語を夢中で読んできました。いつかこんな物語を、自分でも描けるようになりたい。どうしたらそれが出来るようになるのかもわからないまま、手探りで道を探していたのです。                                           (本文「はじめに」より)

 物語は、いずこから生まれるのか。『獣の奏者』、「守り人」シリーズなど、ベストセラーを生みつづける作家・上橋菜穂子が、原体験となった祖母の昔話から、自作の誕生秘話までを語る。
 読むことの喜び、書くことの喜び、そして生きることの喜びを教えてくれる一冊。
                                          (内容紹介より)


 上橋さんの作品とは、実は私はあまり幸せな出会い方をしていません。
 私の住む西宮市では、毎年初夏に「読んでごらんおもしろいよ」という小冊子が配布されます。主に児童書を紹介するフリーペーパーみたいなもので、小学校で一人一冊配られるのがメインですが、市立図書館でも児童書の棚に、だれでも閲覧できるようにぶらさげてあったりする。ですからいい加減大人になってからも、ぱらぱらめくって参考にしたり。上橋さんのデビュー作『精霊の木』はここで紹介されていました。
 ああ、面白そうだな、と惹かれて手に取ったのですが、これがどうも私には合わなかった。ネイティブアメリカンアボリジニの価値観、慣習をそのまま異星の文化にした設定。この作家ならではのオリジナリティはどこにあるのか。その上、登場人物にそういう文化と「そっくりだわ」と言わせてしまったのにも、いや、せめて異星の文化として押し通してよ、と眉を顰めてしまいました。
 ただ、強烈な印象が残ったことは事実です。後年、『守り人』シリーズが話題になった時、「ああ、あの作家さんの作品だ」と覚えていたのですから。何年も前に、たった一冊、一度きり読んだ作品と、同じ作者だ、と。
 で、『守り人』シリーズで見事に描かれた架空の世界を、私は素直に楽しめませんでした。…どこかに元ネタがあるんじゃないかしら。心の奥底に低く流れる黒いものがある以上、手放しで物語に没頭できませんでした。
 今回読んだこの本で、作者は『精霊の守り人』からは「やっと肩の力が抜けた」と語っています。それまでに培ってきた知識なり体験なりを、自分の中で咀嚼、発酵・熟成させて表現できるようになった、ということでもあるのではないかしら。…とちょっとえらそうに思ってみる(苦笑;)。
 他国の文化なり歴史なり神話なりを参考にして作品を書く、というのは多くの人がやっていることだと思います。その中で単に真似に終わらず、その作者自身の個性、オリジナリティにまでなる、ってボーダーラインはどこにあるのかなぁ。
 何かとりとめのないことを思ってしまいました。