読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

イルカの夏 カテリーネ・アルフライ著/矢川澄子訳 岩波書店 1969年

 ドイツでの出版は1963年。

 舞台はギリシャ、カロニュソス島。
 アンドルーラはおかあさんのエヴァンゲリアと二人暮らし。お父さんは海で亡くなってしまいました。貧しいながらも明るく過ごすアンドルーラに、いとこのスタッサが、心ない言葉を投げつけます。「こじきの子とたいしてかわりないくせして!」
 そんなこと母親にも相談できません。一人で遊ぶアンドルーラに、ある日、イルカが話しかけてきました。ブドウが大好物だというイルカ。イルカはアンドルーラを、無人島ヒリアに連れて行ってくれました。波の乙女たちと戯れ、ヤギ足のパーンの子供たちと遊び、ケンタウロスとお話をし…。夢のような日々は夏休み中続きました。
 学校が始まってからも、アンドルーラの心はヒリアの島に飛んだまま。心配したエヴァンゲリアは教会の聖母さまに祈ります。アンドルーラは不思議な老女にたしなめられ、エヴァンゲリアの再婚相手と共に、やがてカロニュソス島を出て行くことになります。…


 酒井駒子さんがエッセイ集『作家の本棚』で紹介されていた一冊。
 なるほど、こりゃ楽しいわ。辛い現実世界から離れ、「ここではないどこか」で過ごす少女。『秘密の花』や『ナルニア国物語』にも通じる展開、誰にも内緒の後ろめたさやはらはらどきどき、というのもポイント高いですね。
 古い本だけあって、今では使い難いような言葉も出て来ました。ある意味新鮮(苦笑;)。
 結局少女は現実世界を受け入れます。幸せな形での対峙なので、よかったかな。母親の意識改革も描いているのが、ちょっと外国だな、と思いましたよ。