読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

想い雲 みをつくし料理帖  高田郁著 ハルキ文庫 2010年

 『みをつくし』シリーズ第三弾。

豊年星――「う」づくし
 常連客の坂村堂が、自分の家の料理人にぜひ澪の料理を覚えさせたい、と言って来た。快諾した澪の元にやって来たのは、天満一兆庵江戸店で、若旦那佐兵衛と共に働いていた料理人・富三だった。
 天満一兆庵江戸店が潰れた事情を、漸く訊けた芳と澪。富三が語る佐兵衛の姿は、吉原の遊女に入れ上げた挙句、彼女を殺して出奔した、と言うものだった。佐兵衛の行方を捜して欲しい、と富三に頼み込む芳。嘉兵衛形見の簪まで渡す姿に、澪は疑問を抱く。

想い雲――ふっくら鱧の葛叩き
 吉原の見世翁屋に、客から鱧の差し入れが届いたらしい。江戸では珍しい品物に、澪に鱧を捌いて欲しいとの依頼、しかし翁屋の店主は、いざ来た澪が女料理人であることを理由に態度を豹変させる。野江に懐かしい上方の味を、と思う澪は源斉の力添えも受けて何とか調理し、野江との一瞬の邂逅に成功する。

花一輪――ふわり菊花雪
 昔のつる屋の跡地に、同じ「つる屋」の屋号を持つ店ができた。しかも食中毒を出し、風聞被害が澪のいる本家つる屋にまで影響を及ぼす。苦肉の策として、日を決めて酒を出すことを決意する澪。酔漢相手の用心棒も兼ねて手伝いに来てくれた翁屋の又次は、店の前で秋刀魚を焼いて、客引きをする。

初雁――こんがり焼き柿
 ふきの弟・健坊が、奉公先の登龍楼から逃げ出してしまった。先につる屋に来た健坊を追い返したふきは、ろくろく物の食べられず健坊の行方を捜し回る。漸く見つかった健坊に焼き柿をふるまいながら、芳は、健坊は元の登龍楼に戻った方がいい、と諭す。…


 天満一兆庵江戸店が人手に渡った理由が明らかになる一冊。
 同業者の反感を買ってということは、やっぱり登龍楼が一枚噛んでると思っていいんでしょうね。珊瑚の簪は、三度芳の元に帰って来るんでしょうか。あんなにもしっかりした人が、息子のことになると、やっぱり惑乱してしまうんですね。
 小松原さまの正体も薄々判って来ました。
 それにしても、しっかりこっそり底辺に、「それでも大阪の料理の方が美味しいし…」という主張が流れている気がして仕方ないわ、気の所為かしら(笑)。