読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

八朔の雪 みをつくし料理帖 高田郁著 角川春樹事務所 2009年

 大阪で幼い頃水害にあい、両親を亡くした少女・澪が、その後世話になった料理屋の女将と江戸に移り住み、持ち前の料理の腕でその地に受け入れられて行く連作短編集。
 ネタばれあります、すみません;

狐のご祝儀――ぴりから鰹田麩
 大阪の料理屋「天満一兆庵」が火事に会い、澪は主人の嘉兵衛と女将のお芳と共に、江戸店の佐兵衛を頼って江戸に下ってきた。所が江戸店は潰れており、佐兵衛は行方不明。その事実を知った嘉兵衛はショックで急逝、すっかり心身弱ってしまったお芳を助けて澪は働き口を探す毎日。近くの稲荷神社を掃除していた姿を見染められて、蕎麦屋の「つる屋」で働くことに。
 大阪と江戸の味の差に戸惑いながら、新しいメニューを考える澪。鰹の出汁がらで何かできないか、工夫を重ねる。

八朔の雪――ひんやり心太
 吉原見物の帰り、食べた心太の東西の差に驚く澪。水害の前、幼なじみの野江とのエピソードを思い出す。つる屋のおやつとして出した上方風の心太は、評判を呼んだ。

初星――とろとろ茶碗蒸し
 つる屋の主人種市が腰を壊して、蕎麦が打てなくなった。澪に亡くした娘を重ねていた種市は、店を澪に譲ることを決意する。だが澪の料理は、江戸っ子になかなか受け入れられない。お芳がサクラを買って出て、何とか戻り鰹を使った鰹飯は評判を得たが、常連客の小松原は澪の料理の決定的な欠点を指摘する。
 大阪と江戸の出汁の取り方の違い。澪は両者のいい所取りをして、とうとうつる屋特製の茶碗蒸しに辿り着く。吉原の花魁にもその評判は届き、持ち帰り用の茶碗蒸しの工夫にまで行きついた。

夜半の梅――ほっこり酒粕
 つる屋のとろとろ茶碗蒸しが番付表に載った。ますます繁昌する中、近くに名門料理屋「登龍楼」が出店、茶碗蒸しまで真似されて、客がそちらに流れてしまう。誠実な味で漸く客が戻って来た頃、店は嫌がらせに会った上、付け火されて全焼する。すっかり気落ちする澪に手を差し伸べたのは、吉原のあさひ大夫だった。新年、澪は焼け跡に屋台を立てて、酒粕汁を売り出す。…


 『銀二貫』を読んで以来、いつか読もうと思っていた『みをつくし料理帖』。
 うん、噂に違わず面白かったです。『赤毛のアン』や『若草物語』の昔から、美味しいものや着るものはとにかく間違いなく惹きが強い(笑)。
 人との繋がりが収束されて行く展開が心地よい。ただ、澪の父親の塗り箸が天満一兆庵と関係があったとかのエピソードはともかく、あさひ大夫の正体には「これはちょっと出来過ぎじゃないかい?」とか思ってしまいましたよ。こりゃきっと佐兵衛は登龍楼の板場で働いてるぞ、とちょっと意地悪く考えたり。最後まで読んで、さすがにそれはないかな、と思い直したのですが、天満一兆庵江戸店が潰れた裏には、登龍楼が関係しているに違いない、と踏んでいます(苦笑;)。そう、登龍楼が文句ない悪役っぷりでしたね。
 さて、新しい店はどうなるか、小松原の正体は、佐兵衛は今どこにいるのか。医師の源斉は澪と恋仲になったりするんでしょうか。次巻に続きます。