読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

島はぼくらと 辻村深月著 講談社 2013年

 ネタばれあります、すみません;

 瀬戸内海の火山島・冴島に暮らす高校生たち。同級生の四人は、フェリーで本土の高校に通っている。
 池上朱里は父親を海で亡くしている。母と祖母との三人暮らし。
 榧野衣花は網元の一人娘。高校卒業後も島で暮らすことを当たり前のこととして受け入れている。
 矢野新は演劇部所属。通学の関係でろくろく部活動に参加できないのが悔しい、脚本家志望。
 青柳源樹はIターン組の親に連れられて島に来た、島最大の観光ホテルの御曹司。デザイナーの母親は離婚して、島から出て行っている。
 過疎が進むかと思われた島は、Iターンと呼ばれる新しい島の住人を招き入れること、地域産業に力を入れることによって活性化しようとしていた。だが、その分歪みも生まれることになる。
 「この島に住みたい」と移住してきた自称脚本家 霧崎ハイジは、有名脚本家が冴島に残したという幻の脚本を探しており、新が書いた偽の脚本をそれだと勘違いして去って行った。
 シングルマザーの多葉田蕗子は元水泳のオリンピック選手。メダルを取った途端に変わった周囲の態度に心がついて行けず、一人この島に来て、娘の未菜を育てている。
 「島に呼ばれた」と言う本木は、気の弱そうな青年。村で一番便利のいい空き家を住まいとして与えられ、あちこちで手伝いをして生計を立てている。蕗子にほんのり思いを寄せているらしい。
 ただただやり手で親しみやすいと思われた村長は、自分の利益を含んだ上に行動していたし、それを全て承知した上で、地域活性デザイナー 谷川ヨシノは動いていた。
 島のおばあさんの形見分けをするため、本土に行ってしまった元島民を探す高校生4人。修学旅行を抜け出す行動が、一人の女性の目にとまり、やがて「幻の脚本」の正体が明らかになる。…


 直木賞受賞後第一作、になるのかな。
 うん、面白かった。何度か泣きそうになりました。源樹のお母さんからの母子手帳「たくさん、たくさん げんきでいてください」ってのはキたなぁ。『20世紀少年』のワンシーンを連想したりしましたけど。
 何か、現実が妙に重なった作品でもありましたね。フィギュアの安藤選手の出産は、このお話書かれた頃にはまだ話題になってなかったと思うんですが、偶然ですよね?? 福島の現状に力を注ぐ人々の姿も描かれてるし。
 TVの取材に応じてしまおうとする朱里の母親にはちょっとびっくりしましたね。後々蕗子の例が出ましたが、DVに悩んで逃げてきた女性もいるのに、見つけられたらどうするんだ??と眉を顰めてしまいました。
 島の狭い社会、悪口を言いながら次の日にはけろりとしている人々ってのは本当、田舎にはありがちで。で、私はそういうのを併せのむ、ってのができなくてですね、未だに苦労している人間なので(だから私は意識的に、人のいい面ばかり見るよう努力してるんですが)、私はこういう所に住むのはしんどいだろうな、と思いつつ。
 赤羽環が出てきたのには驚きました。立派にやってるんだねぇ、よかったよかった。霧崎ハイジって人もどこかで出てきたかしら、覚えがあるようなないような名前なんだよなぁ。