読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

ソロモンの偽証 第Ⅲ部 法廷 宮部みゆき著 新潮社 2012年

 第三部。
 ネタばれになっているかも、すみません;

 いよいよ裁判開始。
 傍聴人で席が埋まる中、体育館での審議が始まる。
 証人は様々、第一発見者野田は勿論、教師や刑事、柏木卓也が小学生の頃通っていた塾講師、父親や兄まで。茂木記者が証言すれば、それに振り回された派遣業務の女性がその信憑性を疑問視する証言を繰り出す。大出俊次の被害者、他校生の増井望が自分が受けた仕打ちについて告白し、大出の暴力性に言及すれば、橋田はその事件がきっかけで大出から離れた、その前に大きな事件があったらそこで縁を切っていたと言う。
 三宅樹理は傍聴人のいない所で証言し、事件当日大出が柏木を突き落とした所を見たと言い、弁護側は本物の弁護士を引っ張り出して来て、大出がその日自宅から一歩も出なかったことを証明する。その上で、大出がそんな告発状を出されても仕様が無かった実態を暴きだす。
 だんだん卓也の、クラスメイトの知らなかった一面が現れて来る。繊細で物事を小難しく考える、仙人のような姿。死について思いを馳せ、不良たちには薄気味悪く見えたこと、そして、とある不幸な境遇を背負った同級生に寄せた、並々ならぬ関心の深さ。
 藤野涼子は最後の証人として、弁護人神原和彦の名を上げる。…


 第三部は一気でした。
 まぁ何と、宮部さんの、ひとに対する視線の暖かいこと。憎まれ役だった三宅樹理にまで見せ場を作る優しさ、確かに藤野涼子が弁護人を務めていたら、彼女は救われてない訳ですもんね、告発状には触れないつもりだったんだから。で、その神原和彦を免罪しようと奔走する野田健一、陪審員の面々。
 いくら優秀な生徒でも、ここまでできるものかしら、という疑問は少々残りはするんですが。
 私自身、中学校にあまりいい思い出はなくて、それはやっぱり教室内のカースト制だったり、あまり尊敬できる教師に出会えなかったことだったり、自分の高すぎる自意識を思い出したくなかったりするんですが(結局自分の所為じゃん・苦笑;)。
 本当、公立中学校というのは坩堝だったよなぁ。私、働き始めて思い出したのは、小中学校の時の班活動でしたもの。普段交流のない、仲も良くない人とチームを組んで一つのことに取り組んで行くストレス。まさしく小さな社会でしたね。宮部さんにも悩んだ時期はあったんだろうか、舞台にこの時代を設定した意味は、地価狂乱の意味合いだけかしらん。
 この作品の登場人物たちは、かけがえのない友達を得た訳で。宮部さん、本当に優しいなぁ。
 いや、面白かったです。