読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

闇の虹水晶 乾石智子著 朝日新聞出版 2012年

 乾石智子、4冊目。
 これは今までのとは別のシリーズ(シリーズかどうかはわからないけど)になるのかな。
 ネタばれあります、すみません;

 ――その力、使えばおのれが滅び、使わねば国が滅びよう。
 それが創石師(ナイア)・ナイトゥルに<塩の魔女>がかけた呪いだった。
 一世代に一人だけ現れるという、「創石師」のナイトゥル。人の感情を靄に見て両手のひらに包めば石を創ることができるという稀有な魔力を持ちながら、対立する部族の侵攻によって、家族や婚約者、血族のすべてを失い、恨みや憎しみといった感情までも奪われ、敵のために自らの命を削ってその力を使う日々を送っていた。
 贈り物代わりに遠方の部族に遣わされたナイトゥルは、その帰り、足を怪我した女と出会う。前日に会った虎の咆哮にも似た彼女の呻き声、治療のためその傷口から取り出したのは、闇色に七色の虹をちりばめた水晶。その石はナイトゥルに、遠い異国の景色を見せる。
 その幻が現実のものだと知るのに、そう時間はかからなかった。遠くから聞こえてくる戦火の音、破竹の勢いで領土を広げるサンジャル国の王の名は、その風景に出てきたものだった。殲滅を宗とする現支配者オーシィンよりも、全てを吸収し、学習するサンジャル国王ライハイルやその王子に心惹かれるナイトゥル。だが実際は、ナイトゥルはオーシィンを助けるために戦場に出る。
 オーシィンの腹心でありながら、何より保身に走る癖のあるアルターフ、オーシィンの口車に乗って東南の護りを約束する竜王ブラドスト。結果、オーシィンとブラドストは対立し、それを防ごうとしたナイトゥルは二人の心の奔流を取り込むことになる。
 瀕死の状態で、それでも最後の取引材料として利用されるナイトゥル。この世に何の未練もない筈だった彼に、竜の強欲とオーシィンの闇が力を与える。彼が引き出されたのは、何度も幻に見たライハイル王の御前だった。…

 うん、面白い。すごいなぁ。読んでて心地いい。
 これはいわゆる文章力、というやつなんだろうなぁ。ナイトゥルがオーシィンやブラドラスの心に翻弄される場面にしても、ライハイル王を救う場面にしてもかなり観念的、抽象的なのにこれだけ読ませる、というのは。何となく小野不由美の『十二国記』、『風の海 迷宮の岸』で泰麒が饕餮を降したシーンを思い出しました。
 この人の作品では、女性は導き手なのね。
 個人的に宝石・貴石の類は元々好きなので、その点でも楽しめました。
 表紙イラストが今市子さん。好きな漫画家さんなんですが、愛情も伝わってくるのですが、でもごめん、私は東京創元社の羽住さんの方に軍配をあげるわ;