読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

逆回りのお散歩 三崎亜記著 集英社 2012年

 中編一本、短編一本収録。
 ネタばれになってます、すみません;

 逆回りのお散歩
 A市は今、C町との合併に動き始めている。表向きはA市がC町を吸収する形だが、実際はA市はC町に乗っ取られようとしている、と和人は言う。統合反対運動もネット上で盛り上がっているのみ、実際に動こうとすると潰されてしまうのだとか。半信半疑の聡美の前で、反対論者のデモ行進は差別主義者の戯言として片付けられてしまった。
 この動きはいつからあったのか、疑い出せばきりはない。聡美のお見合い相手、C町役場勤務の石川さんは、この統合は、十年後二十年後を見据えた、町の発展のための第一歩だと言う。だが、聡美には素直に信じられない。彼女には彼女なりの、人に言えない情報を掴んでいたから。


 戦争研修
 町同士の戦争研修に参加する職員たち。戦争を町おこしのイベントとする研修を、大体の人間がおざなりに受ける中、一人森見町の職員・杉田は真面目に質問を繰り返す。その姿に香西は不安を覚える。…

 
 久しぶり、三崎さんのこのテイストの作品は。
 知らないうちに進んで行く事態、流されるままなら何の疑問を抱かないで済んだのかもしれないけれど、疑い出せば奇妙に合致する過去の出来事。
 何かの暗喩に満ちたような世界は読んでいて不安になります。物事を何だかかんだ疑っていくのは嫌なので、できれば単純明快に、裏表なくあったほしいと思うんですが。…これは見ないふりになるのかなぁ; 
 三崎さんにとって、『となり町戦争』の世界は永遠のテーマなのかも。