読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

仙台ぐらし 伊坂幸太郎著 有限会社 荒蝦夷 2012年

 エッセイ集、なのかな。
 仙台の街中を舞台に、出会ったタクシーの運転手について語り、猫について語り、心配事や自身の作品の映画化や失われた店、見知らぬ人について語り、最後に震災について語る。そして、震災後、移動図書館に携わる青年の短編『ブックモビール』収録。
 あとがきに曰く、最初の頃は虚々実々入り混じった内容だったようで、どこまでが本当のことなのやら(笑)。ただ、やっぱり面白い。というか、伊坂さんの文章は本当、チャーミングだなぁ、としみじみ思わせてくれる内容でした。パソコンのここ一ヶ月分のデータが無くなったかも、という一節

 つまり、この一ヶ月分の原稿が消えたということは、この一ヶ月間、何もしないで、たとえば映画を見まくり、ゲームを夢中でやり、本やマンガばかりを読んで、とにかく仕事をまったくしないで過ごしていたのと同じことではないだろうか。
 ああ、そうすれば良かった。

 の文章には本気で吹き出しました。
 ただ、震災以後の文章はやはりテイストが変わります。伊坂さんがアドバイスを受けたという、急に泣き出したり怒りっぽくなったり情緒が不安定な状態になる、というのは、実は私も阪神淡路大震災以後経験したことで、ああ、元に戻るために必要な通過儀式だったんだな、と今さらながら思い当りました。
 伊坂さんが新刊を出せる状態になるのに、どれほどの精神的ハードルを越えなければならなかったのか、結局本人しか判らないことだとは思うのですが、でも書いて下されば、見知らぬたくさんの読者がついて行き、広がって行きます。伊坂さん、出版して下さってありがとう。