読書記録~防忘録~

読書記録です。時々、漫画やアニメにも独り言してます。

コーランを知っていますか 阿刀田高著 新潮社 2003年

 コーランを優しく紐解いたエッセイ集。

 同じ著者が解説した新約聖書旧約聖書についてのエッセイはかなり前に読んでいたのですが、こちらは何故か読み損ねていました。「そういえば…」と捜してみたら図書館の「宗教」の書架に。…うん、なかなか目には留まり難いね。
 以前、エジプト人のタレント フィフィさんがTVで「コーランは生活の書だから」と言っていたのを妙に覚えています。豚肉を食べないのも、決して神聖視している訳ではなく、昔は調理技術が未熟だったから加熱がしっかりできなかった場合も多くて、で「危うきに近寄らず」豚肉を食べるな、という教えになったとか。阿刀田さんはそれも踏まえた上で、「ただアラーが許さないから」という理由がしっくりくる、と書いてらっしゃいましたが。
 モーゼもキリストも預言者と認めた上で、でも一番は最後に現れたマホメット。神は一人しかいないから、同じ一神教キリスト教徒やユダヤ教徒との結婚はよくても仏教徒とは許されない。
 アラブのフェミニズムに対する考え方で、夏目漱石こゝろ』をを引き合いに出されていたのが印象的でした。私は『こゝろ』は高校生の頃一度読んだきりなのですが、今でも忘れられないのが結婚を申し込んだ「先生」に対するお嬢さんの母親の一言。「よござんす、さしあげましょう」って即答するんだよなぁ。「お嬢さんの気持ちは聞かないの??」って、あの話ではお嬢さんは実際二人のことをどう思っていたのか、最後まで描かれないんですよね。イスラムでも、女性本人が自分の気持ちを語ることは多くない。やっぱりちょっと引っかかるのは、無宗教の身からすると仕方ないんでしょうね。
 ドラマチックなマホメットの人生を描くのではなく、マホメットが預かった神の言葉を記したものがコーランで、いくら言っても失敗ばかり繰り返す人間にひたすら説教をしている感じなのだとか。実際アラビア語で詠唱しているさまは荘厳だそうです。
 最終章は著者自身のサウジアラビア旅行記。阿刀田さんの奥様も聡明な人なんだよなあ。